華夏の煌き
怒りが収まらないバダサンプは、イライラと歩き回ったのち身近な兵に、さっき金を与えた者たちを処分するように命令した。京湖と間違えて晶鈴をさらってきた男たちは今頃、もらった金で酒を飲み楽しんでいるだろう。娯楽もつかの間、すぐに首をはねられるのだ。
命令を下すと、わずかばかりバダサンプの留飲を下げた。
「さて、その女の処分だが……」
「この者に非はありません。自国に帰してやるがよいでしょう」
「いや。わしをぬか喜びさせおって……。ちょうどよい。浪漫国に向かう隊商がいるだろう。この女を奴隷として売ってやろう」
「そ、そんな」
「浪漫国は人種が違う者を奴隷にするのが好きだからな。高く売れるだろう」
老人は晶鈴に今までの話を告げた。
「すまぬな。そなたは華夏国へと戻れぬようじゃ」
「いいのよ。あなたのせいではないわ」
「わしにもっと力があれば……。ラージハニ様……」
この老人が京湖を慕っていて、バダサンプには心から従っていないことはよくわかった。晶鈴はこの老人に京湖は元気だと、今のうちに逃げることが出来るだろうと告げてやりたかったが、余計な言動は慎んだ。ただ一言「20年ちょっとの我慢ですわ」と老人に告げた。
この時の晶鈴にはなぜだかわからないが、そんな言葉がつい口から出た。晶鈴がこの国を去って20年過ぎに、ラージハニこと朱京湖がみつかり、彼女によってバダサンプが暗殺されたとき、老人は予言だったのだと気づいた。
106 浪漫国へ
浪漫国へ向かう隊商は土耳其国(トルコ)に立ち寄り、荷物の半分を交易する。土耳其国も大きな国だが民族と宗教の分裂により、まとまりがない。西国との関係は悪くもなく良くもなかった。ここでも奴隷として売られている人間を何人か手に入れシルクロードを通り浪漫国に向かう。
骨の転がる砂漠を越え、赤い岩山を上り、青々とした草原を渡る。見る景色が全て新しく感じた晶鈴にとって奴隷として売られていく長旅が辛いものではなかった。
命令を下すと、わずかばかりバダサンプの留飲を下げた。
「さて、その女の処分だが……」
「この者に非はありません。自国に帰してやるがよいでしょう」
「いや。わしをぬか喜びさせおって……。ちょうどよい。浪漫国に向かう隊商がいるだろう。この女を奴隷として売ってやろう」
「そ、そんな」
「浪漫国は人種が違う者を奴隷にするのが好きだからな。高く売れるだろう」
老人は晶鈴に今までの話を告げた。
「すまぬな。そなたは華夏国へと戻れぬようじゃ」
「いいのよ。あなたのせいではないわ」
「わしにもっと力があれば……。ラージハニ様……」
この老人が京湖を慕っていて、バダサンプには心から従っていないことはよくわかった。晶鈴はこの老人に京湖は元気だと、今のうちに逃げることが出来るだろうと告げてやりたかったが、余計な言動は慎んだ。ただ一言「20年ちょっとの我慢ですわ」と老人に告げた。
この時の晶鈴にはなぜだかわからないが、そんな言葉がつい口から出た。晶鈴がこの国を去って20年過ぎに、ラージハニこと朱京湖がみつかり、彼女によってバダサンプが暗殺されたとき、老人は予言だったのだと気づいた。
106 浪漫国へ
浪漫国へ向かう隊商は土耳其国(トルコ)に立ち寄り、荷物の半分を交易する。土耳其国も大きな国だが民族と宗教の分裂により、まとまりがない。西国との関係は悪くもなく良くもなかった。ここでも奴隷として売られている人間を何人か手に入れシルクロードを通り浪漫国に向かう。
骨の転がる砂漠を越え、赤い岩山を上り、青々とした草原を渡る。見る景色が全て新しく感じた晶鈴にとって奴隷として売られていく長旅が辛いものではなかった。