華夏の煌き
「母上……」
「不思議ね。顔はそっくりなのに、中身はまるで違う。私が求めるものとあなたの求めるものはまるで違う」
「そのように言われても、わたしにもわかりません」
「いいの。とにかく少しで頭に入れておいてくれるといいわ」
「わかりました」
「では、これで」
にっこり笑んだと思ったら晶鈴はふっと消え去った。
「母上? 母上!」
あたりをきょろきょろ見渡したが晶鈴の影も形もない。
「行ってしまわれた」
あっという間の再会が終ってしまった。しかし不思議と悲しい気持ちにはならなかった。飄々として風のようにつかみどころのない少女のような母だった。
「今、また追いかけても、もういないのだろうな」
馬に乗ってまたさっきの町に行ったところでどうなるものでもない。ずっと胸につかえてたものが下りる気がしていた。ただ残念なのは、せっかく浪漫国の言葉を学習していたのに使えなかったことだ。
「母上、お元気で」
北に向かう晶鈴に祈りを込めて言葉を発する。眠った明々と優々を起こさないようにそっと厩舎を出て夜空を仰ぐ。北の空には北極星が輝いている。北へ旅する晶鈴はきっとこの星眺めるだろうと、しばらく星羅は北極星を見つめ続けた。
110 京樹の帰国
華夏国民の1割が飢餓で死に、国庫もほぼ尽きかけたころ気候に温暖の兆しが見えた。まだ油断はできず、質素な生活が推奨されてはいるが国難の頂点からは抜け出たようだ。それと同時に太極府でずっと星を読んできた朱京樹は星が見えなくなった。
「華夏国での僕の役割は終わったようだ」
京樹は再三、西国の王にと使者がやってきていたが、返事を伸ばしていた。華夏国の行方と、妹の星羅が心配だったからだ。
その心配ももうなくなりそうだ。星羅から無理をしてない前向きな姿勢が感じられる。実母の胡晶鈴に会えたようで、心の憂いが減っているようだ。
兄として妹を支える必要性がなくなり、星も見えなくなり、華夏国でやるべきことは、もはやないかもしれない。
達観する京樹だが、太極府の陳賢路はたいそう残念がる。
「おぬしをわしの跡継ぎにさせたかったのじゃがなあ」
「異国民の僕にそこまで期待してくださって本当にありがとうございます」
「しょうがない。京樹は占術師ではなく、王になる運命だったのじゃな」
「不思議ね。顔はそっくりなのに、中身はまるで違う。私が求めるものとあなたの求めるものはまるで違う」
「そのように言われても、わたしにもわかりません」
「いいの。とにかく少しで頭に入れておいてくれるといいわ」
「わかりました」
「では、これで」
にっこり笑んだと思ったら晶鈴はふっと消え去った。
「母上? 母上!」
あたりをきょろきょろ見渡したが晶鈴の影も形もない。
「行ってしまわれた」
あっという間の再会が終ってしまった。しかし不思議と悲しい気持ちにはならなかった。飄々として風のようにつかみどころのない少女のような母だった。
「今、また追いかけても、もういないのだろうな」
馬に乗ってまたさっきの町に行ったところでどうなるものでもない。ずっと胸につかえてたものが下りる気がしていた。ただ残念なのは、せっかく浪漫国の言葉を学習していたのに使えなかったことだ。
「母上、お元気で」
北に向かう晶鈴に祈りを込めて言葉を発する。眠った明々と優々を起こさないようにそっと厩舎を出て夜空を仰ぐ。北の空には北極星が輝いている。北へ旅する晶鈴はきっとこの星眺めるだろうと、しばらく星羅は北極星を見つめ続けた。
110 京樹の帰国
華夏国民の1割が飢餓で死に、国庫もほぼ尽きかけたころ気候に温暖の兆しが見えた。まだ油断はできず、質素な生活が推奨されてはいるが国難の頂点からは抜け出たようだ。それと同時に太極府でずっと星を読んできた朱京樹は星が見えなくなった。
「華夏国での僕の役割は終わったようだ」
京樹は再三、西国の王にと使者がやってきていたが、返事を伸ばしていた。華夏国の行方と、妹の星羅が心配だったからだ。
その心配ももうなくなりそうだ。星羅から無理をしてない前向きな姿勢が感じられる。実母の胡晶鈴に会えたようで、心の憂いが減っているようだ。
兄として妹を支える必要性がなくなり、星も見えなくなり、華夏国でやるべきことは、もはやないかもしれない。
達観する京樹だが、太極府の陳賢路はたいそう残念がる。
「おぬしをわしの跡継ぎにさせたかったのじゃがなあ」
「異国民の僕にそこまで期待してくださって本当にありがとうございます」
「しょうがない。京樹は占術師ではなく、王になる運命だったのじゃな」