華夏の煌き
 華夏国の一団が王宮まで目の前だと思っていると、演奏が始まる。民族としてはあまり容姿に差がないが、表情が険しい。竹でできているだろう笛の音色や柔らかいが、音楽は凛々しく勇敢さを感じさせる。
 すっと一人の初老の男がやってきた。西国とはまた違う華やかな色彩でシンプルで丈の短い服装で、肩から大きな布をたすき掛けにしている。
 両手を合わせて男はやってきた。外交官のようで恭しく挨拶を交わした後、華夏国の一行は王宮に招かれ入っていった。

122 覧山国
 新王にたったムアン王に拝謁する。若い王は温厚で国際化を望む新時代の王だ。世代が星羅と蒼樹に近く、会話を交わすにつれ親しみがわいてくる。ムアンはこの覧山国を世界から孤立させてはいけないと考えていた。しかしこの国際化に対して国が豊かで冷害の影響を受けていなければ、老臣や保守派に完全に阻まれていただろう。

「残念なことにまだ他国と同盟を結ぶことに反対するものが多いのだ」

 誠実な瞳を向けるムアンに蒼樹は「良くなると分かっていても変化を恐れるものが一定数おりますから」と同情した。

「陛下のように、勇気をもって国を、国民をよりよく豊かにしようとする王は他にもいらっしゃいますわ」

 星羅は心の中に、西国の王となった兄の京樹を思い描きながら力強く告げる。

「華夏国は女人の進出が目覚ましいな。わが国ではまだまだ女人の地位が低く、仕事もないのだ」

 覧山国は完全に男尊女卑の国で、女は男の所有物になり、自立する道はない。女が就く職業など皆無に近かった。とにかく早く結婚をして夫に仕えるのだ。
 女性の地位を向上させようとするムアンに星羅は好意を持った。華夏国で育った星羅は、西国も覧山国も、おそらく他の国もきっと女人の地位が恐ろしく低いのだと知る。まるで男と同じ人間ではないようだと思うと空恐ろしい。
 華夏国では男女という性差で社会的な地位が決まることはなかった。個人の能力が重要であると蒼樹が話すとムアンは目を輝かせて聞き入った。

「まあ、ここまでくるのに長い時間がかかっていますが」
「うんうん。我の代ではどこまでできるか分からないが。しかしやっていかねばな」

 ムアンの人柄がよくわかり、十分に良い外交ができたと思い蒼樹も星羅も安堵する。このまま覧山国の治世が落ち着いていれば、華夏国とは良い国交を結んでいけるだろう。

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