華夏の煌き
迷子になったような心細い表情をする星羅を、京湖はすぐに抱き上げる。
「心配しないで。あなたのお母さまはちょっと遠くに御用時に行ってて、今私たちがあなたのとうさまとかあさまには違いないのよ」
「そうだ。星羅は私たちの大事な家族だよ」
彰浩も優しく言葉を続ける。
強い力で星羅は、京湖の身体を抱きしめ「ほんとね。かあさまととうさまと星羅と京樹は家族ね」と尋ねるようにつぶやいた。
「そうよ、ずっとそうよ。でもお顔が少し京樹と違うのは、星羅を産んだのは他のお母さまなの」
傷つけてはいないだろうかと京湖は心配しながら説明をする。しばらく黙って考えていた京樹が口を開く。
「そうか。星羅には父さまと母さまが2人ずついるんだ。僕と兄妹で、星羅は6人家族になるね」
「とうさまとかあさまが2人ずつ? 」
「そうさ。星羅、いいことだよ」
「うん! いいことね!」
京樹の言葉を聞いて、明るく答える星羅に、京湖と彰浩は少しホッとする。京湖たちの身の上は、また二人が成長してから話さねばならないと、とりあえず今を乗り切れたと胸をなでおろす。
わずか1刻ほど先に生まれただけなのに、京樹は母がいない星羅を兄として守らねばと幼い心で決意する。その決意はいつか、家族の情を越え一人の女性として星羅を見つめることとになるとは、まだ誰も気づいていなかった。
35 咖哩
都に住み十年たつが、朱家を脅かす存在は現れず平穏な日々を過ごすことができた。陳老師が密偵の商人に西国を探らせているが、胡晶鈴の行方は相変わらず不明、でそのことが朱京湖に暗い影を落とし続けている。言葉には出さないが、娘の星羅も本当の母親に会いたいはずだろう。
周期的に不安の襲われると、京湖は自国の香料がふんだんに使われた、薫り高く刺激的な料理を作る。小さな屋敷には使用人はおらず、京湖は家の中をすべて取り仕切っている。外からでも漂う刺激的な香りに、星羅は夕食が咖哩だとわかると、胃が刺激され空腹を覚えた。
「かあさま、ただいま。いいにおい!」
「おかえり。今日の勉強はどうだった?」
頭一つ背の低い星羅の美しい髪を、京湖は一撫でする。京湖の身体をぎゅっと抱きしめ、星羅は輝く瞳で見上げてくる。
「楽しかったわ! 歴史を学んだの! 」
「歴史は大事よね」
「何か手伝いは?」
「心配しないで。あなたのお母さまはちょっと遠くに御用時に行ってて、今私たちがあなたのとうさまとかあさまには違いないのよ」
「そうだ。星羅は私たちの大事な家族だよ」
彰浩も優しく言葉を続ける。
強い力で星羅は、京湖の身体を抱きしめ「ほんとね。かあさまととうさまと星羅と京樹は家族ね」と尋ねるようにつぶやいた。
「そうよ、ずっとそうよ。でもお顔が少し京樹と違うのは、星羅を産んだのは他のお母さまなの」
傷つけてはいないだろうかと京湖は心配しながら説明をする。しばらく黙って考えていた京樹が口を開く。
「そうか。星羅には父さまと母さまが2人ずついるんだ。僕と兄妹で、星羅は6人家族になるね」
「とうさまとかあさまが2人ずつ? 」
「そうさ。星羅、いいことだよ」
「うん! いいことね!」
京樹の言葉を聞いて、明るく答える星羅に、京湖と彰浩は少しホッとする。京湖たちの身の上は、また二人が成長してから話さねばならないと、とりあえず今を乗り切れたと胸をなでおろす。
わずか1刻ほど先に生まれただけなのに、京樹は母がいない星羅を兄として守らねばと幼い心で決意する。その決意はいつか、家族の情を越え一人の女性として星羅を見つめることとになるとは、まだ誰も気づいていなかった。
35 咖哩
都に住み十年たつが、朱家を脅かす存在は現れず平穏な日々を過ごすことができた。陳老師が密偵の商人に西国を探らせているが、胡晶鈴の行方は相変わらず不明、でそのことが朱京湖に暗い影を落とし続けている。言葉には出さないが、娘の星羅も本当の母親に会いたいはずだろう。
周期的に不安の襲われると、京湖は自国の香料がふんだんに使われた、薫り高く刺激的な料理を作る。小さな屋敷には使用人はおらず、京湖は家の中をすべて取り仕切っている。外からでも漂う刺激的な香りに、星羅は夕食が咖哩だとわかると、胃が刺激され空腹を覚えた。
「かあさま、ただいま。いいにおい!」
「おかえり。今日の勉強はどうだった?」
頭一つ背の低い星羅の美しい髪を、京湖は一撫でする。京湖の身体をぎゅっと抱きしめ、星羅は輝く瞳で見上げてくる。
「楽しかったわ! 歴史を学んだの! 」
「歴史は大事よね」
「何か手伝いは?」