カモミール
「娘を亡くしてから嫁との関係もうまくいかなくなって離婚したよ。喫茶店を始めたのはそのあとからだ。店の名前を決めるとき、偶然『カモミール』って花を知ったんだ。カモミールの花言葉には、『逆境に耐える』とか『苦難の中の力』っていう意味がある。娘を亡くしたのは辛かったけど、それを乗り越えて生きていこうって思ってそれに決めたの」

 彼はグラスの水割りをぐいっと呷った。
 
 私は彼の話を聞きながらポロポロと涙をこぼしていた。

「なんで美晴ちゃんが泣くんだよ」

「だって…だって…」

「こんな話して悪かったな」

「いえ、悲しいこと思い出させてしまってごめんなさい。話してくれてありがとうございます」

「美晴ちゃんは優しいな」

「真崎さんの方がずっと優しいです」

 いっぱい傷ついて辛い経験をしてきた分、人に優しいんだなあと思う。

「こんな話したのは、明日が娘の10回目の命日だからなんだ。明日は臨時休業にして墓参りに行くつもり」

「お墓参り、私もついていっていいですか?」

「ああ、いいよ」
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