ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
ついたよ
酔いはすっかり覚めました。
……初めから、そんなに酔っていないと思うけれど
今、私はエスターに腰をガッチリと抱き抱えられ、周囲から痛い程の視線を浴びて、祭りの会場を歩いている。
どうしてこうなったのか……
「触らせてあげますよ?」と言ったキャロンさんの手をとろうとした私を、エスターはグッと抱き締めている腕の力を込めて止めた。
「シャーロット、浮気は許さない」
耳元に冷たく低い声で囁かれる。
「うっ、浮気って、キャロンさんは女性でしょっ、エスターはさっきキレイな人と腕を組んで歩いていたじゃない! あっちの方が浮気です」
プイッと顔を逸らすと、なぜか耳朶に口づけられた。
恥ずかしい……皆見てるのにっ!
「僕は仕事しただけだから」
「うっ……」
「シャーロットも、僕と歩きたかったんだね」
甘い声で囁かれる。
確かに……羨ましいと思ったけど……
「…………」
「分かった、一緒に会場を歩こう」
エスターはキャロンさんを冷たく見て、牽制する様に言った。
「シャーロットに手を出さないで」
「出してないっ! どうしたらそうなるのよ!」
キャロンさんは、エスターにプリプリと怒りながら仕事に戻った。
エスターはドロシーさん達に「シャーロットは僕と帰るから、皆は先に帰っていいよ」と言って皆を帰した。
それからずっと彼は、私にピタリと寄り添って歩いているのだ。
時折、髪にキスを落としながら……
うっ……嬉しいけど、恥ずかしい……
「アクセサリーがいいかな? それとも……」
花屋の前で彼は立ち止まり、店員の女性に微笑みかける。
「妻の髪に飾ってくれる?」
店員さんはポッと頬を染め「エスター様のお美しい奥様には、このデザインで」と三つ編みに白と青い花を銀色のリボンと絡ませながら飾ってくれた。
「ありがとうございます」
( 美しい奥様って言って貰っちゃった )
「キレイだよ、シャーロット」
当たり前のように、彼は私の頬にチュと軽くキスをする。
それを見ていた周りにいる女性達が、黄色い声を上げた。
エスターはそんな声は気にもせず、私だけを見て話す。
「お菓子も買う? 最近はバート侯爵の店の物ばかり食べていただろう?」
クスッと意味深に笑うエスター。
昼までの事を思い出し赤面してしまった。
「エスター、あのね」
「何? それも欲しいの?」
店の中で、私に甘く話すエスターの声はお店の人にも聞こえていて、店員さんは「こ、コレですか?」と、顔を赤くしながらお菓子を袋に入れてくれた。
「もう、十分です」
「そう?」
私を見つめ微笑むエスター。
私達の周りには、常に人集りが出来ている。
*
男爵令嬢だった私には、お父様が家庭教師をつけてくれていて、学校へ通ってはいなかった。
一人娘だった私を、両親はとても大切にしてくれた。私が町に出る事は、それこそ『氷祭り』の夜ぐらいだった。両親が亡くなってからはメイドとして働いおり、ずっと屋敷にいた。
その頃の私は、エスターの事は知らなかった。
城で働く様になってから知った、レイナルド公爵令息。けれど、下働きの者達は、彼等の姿は遠目から見る事しか許されていなかった。
……初めから、そんなに酔っていないと思うけれど
今、私はエスターに腰をガッチリと抱き抱えられ、周囲から痛い程の視線を浴びて、祭りの会場を歩いている。
どうしてこうなったのか……
「触らせてあげますよ?」と言ったキャロンさんの手をとろうとした私を、エスターはグッと抱き締めている腕の力を込めて止めた。
「シャーロット、浮気は許さない」
耳元に冷たく低い声で囁かれる。
「うっ、浮気って、キャロンさんは女性でしょっ、エスターはさっきキレイな人と腕を組んで歩いていたじゃない! あっちの方が浮気です」
プイッと顔を逸らすと、なぜか耳朶に口づけられた。
恥ずかしい……皆見てるのにっ!
「僕は仕事しただけだから」
「うっ……」
「シャーロットも、僕と歩きたかったんだね」
甘い声で囁かれる。
確かに……羨ましいと思ったけど……
「…………」
「分かった、一緒に会場を歩こう」
エスターはキャロンさんを冷たく見て、牽制する様に言った。
「シャーロットに手を出さないで」
「出してないっ! どうしたらそうなるのよ!」
キャロンさんは、エスターにプリプリと怒りながら仕事に戻った。
エスターはドロシーさん達に「シャーロットは僕と帰るから、皆は先に帰っていいよ」と言って皆を帰した。
それからずっと彼は、私にピタリと寄り添って歩いているのだ。
時折、髪にキスを落としながら……
うっ……嬉しいけど、恥ずかしい……
「アクセサリーがいいかな? それとも……」
花屋の前で彼は立ち止まり、店員の女性に微笑みかける。
「妻の髪に飾ってくれる?」
店員さんはポッと頬を染め「エスター様のお美しい奥様には、このデザインで」と三つ編みに白と青い花を銀色のリボンと絡ませながら飾ってくれた。
「ありがとうございます」
( 美しい奥様って言って貰っちゃった )
「キレイだよ、シャーロット」
当たり前のように、彼は私の頬にチュと軽くキスをする。
それを見ていた周りにいる女性達が、黄色い声を上げた。
エスターはそんな声は気にもせず、私だけを見て話す。
「お菓子も買う? 最近はバート侯爵の店の物ばかり食べていただろう?」
クスッと意味深に笑うエスター。
昼までの事を思い出し赤面してしまった。
「エスター、あのね」
「何? それも欲しいの?」
店の中で、私に甘く話すエスターの声はお店の人にも聞こえていて、店員さんは「こ、コレですか?」と、顔を赤くしながらお菓子を袋に入れてくれた。
「もう、十分です」
「そう?」
私を見つめ微笑むエスター。
私達の周りには、常に人集りが出来ている。
*
男爵令嬢だった私には、お父様が家庭教師をつけてくれていて、学校へ通ってはいなかった。
一人娘だった私を、両親はとても大切にしてくれた。私が町に出る事は、それこそ『氷祭り』の夜ぐらいだった。両親が亡くなってからはメイドとして働いおり、ずっと屋敷にいた。
その頃の私は、エスターの事は知らなかった。
城で働く様になってから知った、レイナルド公爵令息。けれど、下働きの者達は、彼等の姿は遠目から見る事しか許されていなかった。