ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

捕まった?

「エスター様、此処からですと北回りに城へと入る事に成りますの、よろしいですか?」

マリアナ王女は楽しそうに正面に座るエスターに話す。

「…… 分かりました」

 北回りか……城へは南からだと真っ直ぐな道のりを行くが、北からだとクネクネと曲る道を通ることになる。後続のシャーロットの馬車が視界から何度も消えてしまう……。

「あら、心配されていらっしゃるのね、大丈夫ですわ。あの娘はそのまま治癒魔法士の所へ送り届けますからご安心なさって下さいませ」

「そのまま?」

「ええ……約束しましたわよね? 今から貴方は私の恋人として過ごして頂きますわ、ね、エスター」
マリアナ王女はスルリとエスターの横に座席を移した。

「……マリアナ王女、やはり……僕は」

「マリアナとお呼びになって……約束ですわ? ねぇ、エスター」

「マリアナ……」

 マリアナ王女は嬉しそうに頬を染め、エスターの手に自らの手を乗せ指を絡め、肩にしなだれかかった。

触れられた体から嫌悪感を感じながらも、エスターは一切表情を変える事なく、また動く事もしなかった。

半日、半日耐えればいい…………そう自分に言い聞かせて。

「嬉しいわ、エスター」
二人を乗せた馬車は城へと入って行った。
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