ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
「どうしたの?……怒っている? 僕が遅くなったから?」

「違う、違います」

 顔を上げると泣きそうな顔をしたエスター様がいた。

 彼は壊れ物に触れる様にそっと私に手を伸ばしてくる。

その指先が触れる前に体は無意識のうちに彼から距離を取ってしまう。

「シャーロット……どうして? 僕は……君に触れたくて仕方ないのに、君は嫌なの?」

嫌じゃない、そう私は首を横に振る。

「じゃあどうして? 僕を避けるの?……さっき押し倒したから……怖かった? ごめん……もう、僕は…………限界なんだ」

彼の瞳は悲しげに揺めき、私へと向けられた手は、そのまま強く握りしめられた。

「エスター様……」

「ーーだから、エスターと呼んでくれと言ってるだろう!」


歯痒そうに声を荒げるエスター様は、まるで駄々をこねる子供の様だった。


…… 私も同じだ……
甘い匂いがしたと言うだけ彼を避けているのだから……


でも


でも……


「……エスター……匂う」

ポツリと呟く様に言った。

…… 言ってしまった。


「……えっ?」彼は何を言われたのかわからないと言う顔をしている。

「匂う? 匂うって……臭いの⁈ 」


はっ…と、彼はすぐに何かを思い出した様に

「やっぱり僕が悪い」

そう言うと、着ている服を脱ぎ出した。
次々と部屋の隅に服を脱ぎ捨てていく。

「きゃあ!」

 私は慌てて抱いていたクッションに顔を埋めた。
自慢じゃないが男の人の裸など見たことはない。
それも、こんなカッコいい男性の……鍛え抜かれた体なんて。

ーーうっ、結構ちゃんと見てしまったわ……私。

「しっ、下は脱がないでっ!」

いや、裸にはならないよね?いくら何でもこんな場所で……って場所が違えばいいの?
私……ああ、もうっ!


「あ、うん……さすがにこの場所では、ね」

( ……ん?この場所では?)

いつのまにか私の側に来た彼に、クッションを取り去られ腕の中に抱きしめられた。

「もう、匂わない?」

「……う、うん」

( さっきの嫌な甘い匂いは殆どしないけれど、今度は違う匂いがする……何なの⁈ すごくいい匂い…)

「よかった、嫌われたのかと思った」
「……そんな」
「嫌われても、離さないけど」

エスターは私の肩に顔を埋めた

「はぁ……したい……」
「ーーふぇっ⁈ 」
( したい?したいって言ったよね?何……何を⁈ )
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