幽霊少女は30秒を少年に 少年は一生を幽霊少女に
リビングに着くと、食事の準備を終えた両親が椅子に座って待っていた。
『おはよう』
「おはよう」
僕は両親に挨拶を返し、椅子に座る。
「じゃあ食べるか」
僕が座ってすぐに父が声をかける。
『いただきます』
家族で声を合わせたときの叶は、少し寂しそうだった。
やっぱり叶用の椅子があった方がいい気がする。
隣に座っている方が、
自分が幽霊であることを認識しなくてよくなるのではないか。
少し気が楽になるのではないか。
楽しく幸せな思いをさせてあげたい。
早速だけど、今日の放課後にでも買いに行こう。
そんなことを考えながら、食事をしていると父から
「調子はどうだ?」
と問いかけがあった。
「今日は大丈夫そうだよ」
「疑ったりと勝手だったが、俺は修太朗のことをしっかりと信じる」
「ありがとう。父さん」
「何かあったら言いなさい。どんなことでもできるだけ力になろう」
「心強いよ。ほんとにありがとう」
父に頼れるということもうれしい。
昨日までは、まだ家でも気を使っていた、
どこかに心を落ち着かせることのできる場所が欲しい。
屋上もあったが家も増えた。
屋上と家では、体調や自分の状況をしっかりと見極めよう。
「あ、早速なんだけど。お願いがあるんだけどいいかな」
「内容によるが、可能なら力になる」
椅子を買いたい。
叶へのプレゼントとして。
だけど秘密にしていた方がきっと喜ぶだろう。
「叶、少し来てほしい」
僕は叶に呼びかけ、一度リビングから出た。
両親から見たら、異様な光景だっただろう。
だけれど今は叶が最優先だ。
「叶ってさ、服って変えられるのか?」
現れたときから叶は、幽霊のイメージ通りの白いワンピースを着ていた。
「知っている服ならできるかも?」
「せっかくだし。制服にしてみないか?うちの中学は制服があるからさ」
「いいの?うれしいな~」
「僕の部屋に学校のパンフレットがあるから、それを見て着替えられるかやってみて」
「りょうかいです!」
「僕もご飯を食べてすぐに行くよ」
「はーい」
嬉しそうに叶は僕の部屋に向かう。
僕はリビングに戻った。
「ごめん父さん。さっきの話なんだけど…」
「それより大丈夫か。どこかに話しかけていたが…」
「後で説明するよ。お願いなんだけどいい?」
「とりあえず聞こうか」
「椅子を一脚買いたいんだ。その分のお金をもらえないかなって…」
「新しい椅子か。まあいいぞ。ご飯の後に用意しておく」
「ありがとう父さん」
「まあ後でちゃんと理由は話すんだぞ」
何も深く聞かずに頷いてくれて助かった。
帰るまでに、何かいい理由を考えておかないと。
「学校にお金を持っていくなら気を付けるんだぞ。落とさないようにな」
「気を付けるよ。ごちそうさまでした」
僕も学校の準備をしなければいけない。
叶の後を追うように、僕は自分の部屋に戻った。
部屋の前に着いたが、着替えは終わったのだろうか。
「着替えは終わったか?」
自分の部屋に入るにも確認がいるということは、新鮮で少し面白かった。
「終わったんだけど…」
「じゃあ入るよ」
ドアを開けると制服を着た叶の姿。
「すごいな叶は。きれいにできてるよ」
「うれしいんだけど…」
なぜか顔を赤らめる叶。
僕が褒めたからなのか。
「顔赤いけど、大丈夫か?」
「修ちゃん…制服の後ろってパンフレットに載ってる?」
「正面だけだと思うけど…ってまさか」
「うしろ…なくて…」
叶が作ったのは、前側だけの張りぼてのようなものだった。
「ごめん!とりあえずすぐにさっきのワンピースにしよう」
僕はすぐに手で目を隠して、叶に背を向けた。
「戻したよ~焦った焦った」
「今日はワンピースで行って、みんなの制服を見て来よう」
「そうだね!…ところで修ちゃん…見えた?…」
「見えてない見えてない!」
顔を真っ赤にしていた叶は安心したのか、
少しこわばっていた顔が優しい笑顔に変わった。
「じゃあ学校行くか」
大きく頷く叶は、学校を楽しみにしている小学一年生のように無邪気に見えた。
玄関に行く前に、僕は父に椅子代をもらいに行かないといけない。
「叶は先に玄関に行っていてほしい」
「はーい」と返事をして叶は玄関に向かっていった。
僕は急いで着替えて、父のもとに向かった。
父はお金を準備して待っていてくれた。
「これぐらいで足りるか?」
食事の後は急いで仕事に向かわないと間に合わないはずなのに、
僕のことを待ってくれている父がいた。
そんな父は3万円も用意してくれていた。
「ありがとう。十分すぎるよ」
お金を受け取り、部屋を出る前にもう一度父に感謝を伝えた。
僕は急いで叶のもとに向かう。
玄関に着くと準備を終えた叶が待っていた。
「おまたせ。行こうか」
「遅いよ~修ちゃん。早く学校行こ」
玄関で靴を履き、
「いってきます」と母に聞こえるように言って、家を出た。
ゆっくりと歩きながら、叶と学校に向かう。
誰かと学校に登校するのなんていつ以来だろうか。
昨日と同様に視線は感じるが、今日はあまり気にならなかった。
「なんかみんな修ちゃんのこと見てるね」
「僕はなんか人を殺したと思われているみたいなんだ」
「そうなんだ。なんだか不思議だね」
学校までは歩いて約15分で着く。
昨日の帰りはこの15分が1時間のように長く感じた。
しかし今日はあっという間に学校に着いた。
周りからは見えないが、叶と話して登校するのはとても楽しかった。
『おはよう』
「おはよう」
僕は両親に挨拶を返し、椅子に座る。
「じゃあ食べるか」
僕が座ってすぐに父が声をかける。
『いただきます』
家族で声を合わせたときの叶は、少し寂しそうだった。
やっぱり叶用の椅子があった方がいい気がする。
隣に座っている方が、
自分が幽霊であることを認識しなくてよくなるのではないか。
少し気が楽になるのではないか。
楽しく幸せな思いをさせてあげたい。
早速だけど、今日の放課後にでも買いに行こう。
そんなことを考えながら、食事をしていると父から
「調子はどうだ?」
と問いかけがあった。
「今日は大丈夫そうだよ」
「疑ったりと勝手だったが、俺は修太朗のことをしっかりと信じる」
「ありがとう。父さん」
「何かあったら言いなさい。どんなことでもできるだけ力になろう」
「心強いよ。ほんとにありがとう」
父に頼れるということもうれしい。
昨日までは、まだ家でも気を使っていた、
どこかに心を落ち着かせることのできる場所が欲しい。
屋上もあったが家も増えた。
屋上と家では、体調や自分の状況をしっかりと見極めよう。
「あ、早速なんだけど。お願いがあるんだけどいいかな」
「内容によるが、可能なら力になる」
椅子を買いたい。
叶へのプレゼントとして。
だけど秘密にしていた方がきっと喜ぶだろう。
「叶、少し来てほしい」
僕は叶に呼びかけ、一度リビングから出た。
両親から見たら、異様な光景だっただろう。
だけれど今は叶が最優先だ。
「叶ってさ、服って変えられるのか?」
現れたときから叶は、幽霊のイメージ通りの白いワンピースを着ていた。
「知っている服ならできるかも?」
「せっかくだし。制服にしてみないか?うちの中学は制服があるからさ」
「いいの?うれしいな~」
「僕の部屋に学校のパンフレットがあるから、それを見て着替えられるかやってみて」
「りょうかいです!」
「僕もご飯を食べてすぐに行くよ」
「はーい」
嬉しそうに叶は僕の部屋に向かう。
僕はリビングに戻った。
「ごめん父さん。さっきの話なんだけど…」
「それより大丈夫か。どこかに話しかけていたが…」
「後で説明するよ。お願いなんだけどいい?」
「とりあえず聞こうか」
「椅子を一脚買いたいんだ。その分のお金をもらえないかなって…」
「新しい椅子か。まあいいぞ。ご飯の後に用意しておく」
「ありがとう父さん」
「まあ後でちゃんと理由は話すんだぞ」
何も深く聞かずに頷いてくれて助かった。
帰るまでに、何かいい理由を考えておかないと。
「学校にお金を持っていくなら気を付けるんだぞ。落とさないようにな」
「気を付けるよ。ごちそうさまでした」
僕も学校の準備をしなければいけない。
叶の後を追うように、僕は自分の部屋に戻った。
部屋の前に着いたが、着替えは終わったのだろうか。
「着替えは終わったか?」
自分の部屋に入るにも確認がいるということは、新鮮で少し面白かった。
「終わったんだけど…」
「じゃあ入るよ」
ドアを開けると制服を着た叶の姿。
「すごいな叶は。きれいにできてるよ」
「うれしいんだけど…」
なぜか顔を赤らめる叶。
僕が褒めたからなのか。
「顔赤いけど、大丈夫か?」
「修ちゃん…制服の後ろってパンフレットに載ってる?」
「正面だけだと思うけど…ってまさか」
「うしろ…なくて…」
叶が作ったのは、前側だけの張りぼてのようなものだった。
「ごめん!とりあえずすぐにさっきのワンピースにしよう」
僕はすぐに手で目を隠して、叶に背を向けた。
「戻したよ~焦った焦った」
「今日はワンピースで行って、みんなの制服を見て来よう」
「そうだね!…ところで修ちゃん…見えた?…」
「見えてない見えてない!」
顔を真っ赤にしていた叶は安心したのか、
少しこわばっていた顔が優しい笑顔に変わった。
「じゃあ学校行くか」
大きく頷く叶は、学校を楽しみにしている小学一年生のように無邪気に見えた。
玄関に行く前に、僕は父に椅子代をもらいに行かないといけない。
「叶は先に玄関に行っていてほしい」
「はーい」と返事をして叶は玄関に向かっていった。
僕は急いで着替えて、父のもとに向かった。
父はお金を準備して待っていてくれた。
「これぐらいで足りるか?」
食事の後は急いで仕事に向かわないと間に合わないはずなのに、
僕のことを待ってくれている父がいた。
そんな父は3万円も用意してくれていた。
「ありがとう。十分すぎるよ」
お金を受け取り、部屋を出る前にもう一度父に感謝を伝えた。
僕は急いで叶のもとに向かう。
玄関に着くと準備を終えた叶が待っていた。
「おまたせ。行こうか」
「遅いよ~修ちゃん。早く学校行こ」
玄関で靴を履き、
「いってきます」と母に聞こえるように言って、家を出た。
ゆっくりと歩きながら、叶と学校に向かう。
誰かと学校に登校するのなんていつ以来だろうか。
昨日と同様に視線は感じるが、今日はあまり気にならなかった。
「なんかみんな修ちゃんのこと見てるね」
「僕はなんか人を殺したと思われているみたいなんだ」
「そうなんだ。なんだか不思議だね」
学校までは歩いて約15分で着く。
昨日の帰りはこの15分が1時間のように長く感じた。
しかし今日はあっという間に学校に着いた。
周りからは見えないが、叶と話して登校するのはとても楽しかった。