幽霊少女は30秒を少年に 少年は一生を幽霊少女に
二人で僕の部屋に戻り、学校に行く準備をした。
叶は僕の目の前でくるっと回ると、叶の服は一瞬で制服へと変化した。
アニメの魔法少女顔負けの速さだった。
あたりまえのように着替えているところを見ると、生きているときも頑張って学校に行っていたのだろう。
僕の考えには気づくこともなく、叶はいつも通り明るく少し誇らしげに自慢してきた。
「どうかな、修ちゃん!似合うかな?」
「似合ってるよ。すごくかわいいと思う」
顔を赤らめながら喜ぶ叶を横目に、僕も準備を進めた。
一通り準備を終え、部屋を出て玄関に向かう。
母がリビングから出てきて、僕に近づいてきた。
母は叶に聞こえないように小さな声で、「叶ちゃんを一人にしちゃだめだよ」と耳打ちしてきた。
叶のことを母はすごく心配してくれている。
そんなに心配することもないと思うけれども、一応気を付けることにしよう。
母には「わかった」とだけ伝えてから、叶と二人で家から出た。
昨日と同じように、のんびりと叶と話をしながら学校へと向かう。
今日は梅雨がまだ明けていないこともあり、雨の日だった。
いつもより静かな道路を、傘をさしながら歩く。
「生きているときに、修ちゃんとこんな風に歩きたかったな」
悲しそうな、寂しそうな。
叶はどのような気持ちなんだろう。
「僕と叶はどんな関係だったの?そもそも知り合いだったの?」
僕は叶のことをもっと知りたかった。
というよりも知っているのだろう。
記憶の欠けてしまっている部分に、叶との記憶もあるのだろう。
「私と修ちゃんの関係はね、ちょっと複雑なんだよね…」
少し言いにくいのか、時間がかかっていた。
重い口を開いて告げた内容は、僕にとっては衝撃的なものだったことを鮮明に覚えている。
「私の最初で最後の恋人が修ちゃんだったの」
開いた口がふさがらないとは、このことなのだろう。
「僕に恋人がいたの?それも叶が?」
今まで気にしなかったけれども、今の話を聞くと叶のことを少し意識してしまう。
こんなに良い人がいたのに、僕はなんで覚えていないんだろう。
「あれ、でもそんなに複雑ではないんじゃない?」
恋人だということだけでは、別に複雑な関係とは言えない気がする。
「修ちゃんの恋人だったのは2週間だけなの。私が告白して付き合ったのに私が振るから。ほら、ちょっと複雑でしょ!」
悲しそうに笑う姿を見て、僕はまた君がわからなくなった。
「その言い方だと、僕はまだ振られてないことにならない?」
言い間違えただけだろうか。
知らない間にいた恋人に急に振られるのか。
「振るのは私の本当の30秒が終わるときに…絶対に伝えるの!本当の君に。私を嫌いになってほしいから…」
叶の目からは涙が落ち、一番つらそうな顔を見せた。
叶の声は、強くなった雨の音で遮られて聞こえなかった。
叶は僕の目の前でくるっと回ると、叶の服は一瞬で制服へと変化した。
アニメの魔法少女顔負けの速さだった。
あたりまえのように着替えているところを見ると、生きているときも頑張って学校に行っていたのだろう。
僕の考えには気づくこともなく、叶はいつも通り明るく少し誇らしげに自慢してきた。
「どうかな、修ちゃん!似合うかな?」
「似合ってるよ。すごくかわいいと思う」
顔を赤らめながら喜ぶ叶を横目に、僕も準備を進めた。
一通り準備を終え、部屋を出て玄関に向かう。
母がリビングから出てきて、僕に近づいてきた。
母は叶に聞こえないように小さな声で、「叶ちゃんを一人にしちゃだめだよ」と耳打ちしてきた。
叶のことを母はすごく心配してくれている。
そんなに心配することもないと思うけれども、一応気を付けることにしよう。
母には「わかった」とだけ伝えてから、叶と二人で家から出た。
昨日と同じように、のんびりと叶と話をしながら学校へと向かう。
今日は梅雨がまだ明けていないこともあり、雨の日だった。
いつもより静かな道路を、傘をさしながら歩く。
「生きているときに、修ちゃんとこんな風に歩きたかったな」
悲しそうな、寂しそうな。
叶はどのような気持ちなんだろう。
「僕と叶はどんな関係だったの?そもそも知り合いだったの?」
僕は叶のことをもっと知りたかった。
というよりも知っているのだろう。
記憶の欠けてしまっている部分に、叶との記憶もあるのだろう。
「私と修ちゃんの関係はね、ちょっと複雑なんだよね…」
少し言いにくいのか、時間がかかっていた。
重い口を開いて告げた内容は、僕にとっては衝撃的なものだったことを鮮明に覚えている。
「私の最初で最後の恋人が修ちゃんだったの」
開いた口がふさがらないとは、このことなのだろう。
「僕に恋人がいたの?それも叶が?」
今まで気にしなかったけれども、今の話を聞くと叶のことを少し意識してしまう。
こんなに良い人がいたのに、僕はなんで覚えていないんだろう。
「あれ、でもそんなに複雑ではないんじゃない?」
恋人だということだけでは、別に複雑な関係とは言えない気がする。
「修ちゃんの恋人だったのは2週間だけなの。私が告白して付き合ったのに私が振るから。ほら、ちょっと複雑でしょ!」
悲しそうに笑う姿を見て、僕はまた君がわからなくなった。
「その言い方だと、僕はまだ振られてないことにならない?」
言い間違えただけだろうか。
知らない間にいた恋人に急に振られるのか。
「振るのは私の本当の30秒が終わるときに…絶対に伝えるの!本当の君に。私を嫌いになってほしいから…」
叶の目からは涙が落ち、一番つらそうな顔を見せた。
叶の声は、強くなった雨の音で遮られて聞こえなかった。