幽霊少女は30秒を少年に 少年は一生を幽霊少女に
生徒指導室の戸締りをして、教室に戻った。

気づかない間に時間は進んでいて、もうお昼の時間だった。

教室に入ると、クラスの半分程度が僕を少しにらみつけるように見てきた。

もう半分は僕から視線を一気にそらして、気づかないふりをしているようだ。

クラスの人も僕が殺人犯だと思っているのだろうか。

視線を感じ、僕の存在が浮いてしまう。

そんな居心地の悪いところにはいたくなかったので、僕はお弁当を持って屋上に向かった。



屋上の扉の前に着くと、南京錠が外れ、植木鉢の下の鍵もないことに気づいた。

引き返すか悩んだが、どのみち行く当てもないので諦めて開けることにした。

重い扉をゆっくりと開けると、そこには一人の生徒がいた。

扉が開いたことに気づくと、すぐに慌てて物陰に隠れていた。

おそらくいつも屋上を使っている人だろう。

簡単に見分けはついた。

鍵の位置を知っていることと、決定的なことは椅子に座っていたことが確認できたからだ。

扉が開き、急いで隠れた生徒に僕は声をかけた。

「すみません。お邪魔する気はなかったんです。

 僕はお弁当を食べに来ただけなので、誰にもあなたがいたことは言いませんよ」

すると、一人の女の子が陰から出てきた。

「あれ修くんじゃん!」

屋上を使っていた生徒の正体は美月さんだった。

「なんだ美月さんか…」

まったく知らない人ではなかったため、少し安心して僕は自分の椅子を取りに向かった。

気づいたときには美月さんは座りなおして

「さあさあ、食べよ食べよ!」

と明るく話しかけてきた。

「え、うん」

僕は戸惑いながら、とりあえず返事をした。

椅子に座り、お弁当を食べているときも、美月さんは僕に話しかけてきた。

「ねえ!修くん、なんかしたの?怒られちゃったのかな~?」

「怒られるようなことなんてしてないよ。少なくともした記憶はないよ」

すごくフレンドリーに話しかけてくれる。

僕にとってはありがたいし、話しやすくてうれしい。

そういえば美月さんは屋上をいつから使っているんだろう。

「美月さんはいつから屋上を使っているの?」

「え、いつからも何もないよ、修くんが教えてくれたじゃん!

 鍵の位置と使い終わった椅子の隠す場所!」

「僕が?美月さんに?」

そう聞き返すと、目の前でニコニコしながら首を縦に振る女子生徒の姿。

僕が考え込んでいると、

「そもそもなんだけど。その美月さんってなに!なんかむず痒いんだけど」

美月さんは少し不思議そうな表情をしながら話してきた。

「初対面だし、さん付けした方がいいかなって思ったんだけど。

 名字の方がよかった?」

「…本気で言ってんの?」

少し怒りのような感情がこもっている声の意味が、僕にはわからなかった。

「悪気はなかったんだ」

「私が何に怒っているのか、わかってんの」

「……」

僕は黙っていることしかできなかった。

理由がわからないことを謝ることはできない。

正直に原因を聞こう。

「わからない…美月さんはなんで怒っているんですか」

怒っていた表情とは一転して、少し悲しそうな顔をしながら話し始めた。

「私のこと忘れちゃったの…

 1年の時からずっと一緒にいたのに…」
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