不遇な転生王女は難攻不落なカタブツ公爵様の花嫁になりました
プロローグ
ゴーン――

重厚な鐘の音が、(おごそ)かに響き渡る。

グラストーナ国。

王都にある荘厳な大聖堂の鐘の音に、グラストーナ国第二王女ソフィア・グラストーナは緊張でぴしりと背筋が伸びるのを感じた。

純白のドレスに、白いレースのベール。(つや)やかな金髪はひとつにまとめられて、瞳の色と同じエメラルドの髪飾りで留められている。

二の腕の中ほどまであるシルクの手袋には、銀糸で()(みつ)()(しゅう)が施されてあった。

気の弱い父王が、珍しく王妃の反対を押し切って仕立てさせたソフィアのウエディングドレスは、国内で一番有名なデザイナーのフルオーダーメイド品だ。

いったいいくらするのか、怖くて()くことすらできなかった。

鐘が三回鳴り響いたあとで、目の前の壮麗な観音開きの扉が開く。

ゆっくりともったいつけるように開かれた扉の奥は、最大収容人数五百人という、とんでもなく広い礼拝堂だ。最奥は緻密なステンドグラスに彩られ、高いドーム型の天井には四大神と天使の絵が描かれている。

まっすぐ一直線に敷かれた赤い(じゅう)(たん)の上を、父親である国王とともに進みながら、ソフィアはベール越しに、ソフィアを待つ礼服姿の赤毛の男を見やった。

今日をもって、ソフィアの夫となるランドール・ヴォルティオ公爵である。

「緊張しているのかな?」

隣の国王が小さく笑ったのがわかった。
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