アンドロイド・ニューワールドⅡ
「…分かりました。では、入るのはやめておきましょう」

と、私は言いました。

すると。

「…えっと。瑠璃華さん…は、入りたかった?」

と、奏さんは聞きました。

「いいえ、そのようなことは。私は『新世界アンドロイド』ですから。宇宙人お化け屋敷と聞いて、入るのが楽しみだったとか、面白そうだったとか、そのようなことはありません」

「…」

「ですから、奏さんはお気になさらず。別の場所に…」

「…入りたかったんだね、瑠璃華さん」

と、奏さんはポツリと言いました。

「そのようなことはありません。ただ、とても興味深いと思っていただけです」

「それは入りたいって言うんだよ」

「ですが、奏さんに無理強いしたくはありませんので」

と、私は言いました。

奏さんの恐怖心と、私の知的好奇心と、どちらを我慢するかという話です。

人間は恐怖を感じると、それがトラウマになってしまう可能性もありますから。

我慢するなら、私の方でしょう。

しかし。

「分かったよ、瑠璃華さん…。俺も男だ。覚悟を決めるよ」

と、奏さんは言いました。

どういう意味でしょう?

男とか女だとか、性別が何か関係があるのでしょうか。

男でも女でも、覚悟を決めるときは同じだと思いますが。

「勇気を出して入るよ。男の俺が尻込みしてたんじゃ、あまりにみっともない」

と、奏さんは意を決したように言いました。

「恐怖心に、男も女も関係ないと思いますが」

「関係あるんだよ、これが…。好きな女の子の前だと、余計にね…。情けない姿は見せられないって言うか…」

と、奏さんはもごもごしながら言いました。

もっと、はっきり言ってくださって結構ですよ。

『新世界アンドロイド』の集音性能なら、大声で言おうと小声で言おうと、いずれにしても全て丸聞こえなので。

「大丈夫ですか、奏さん。無理をしていませんか」

「いや、大丈夫。大丈夫…。良く考えたら、お化けって言っても宇宙人だし」

と、奏さんは努めて楽観的に言いました。

「ホラー映画あるあるの、髪が長くて赤い服を着た女…とか、はたまたゾンビ映画みたいに、ゾンビが襲い掛かってくるってこともないだろうし。普通のお化け屋敷に比べたら、きっと大したことないよ」

「そうですか」

「うん。何より、たかが学生の、文化祭の出し物だからね。大したお金もかけられないだろうし…。きっとこけおどしだよ。大丈夫」

と、奏さんは笑顔で言いました。

分かりました。

奏さんの許可も頂けたので。

いざ、宇宙人お化け屋敷、初体験です。
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