アンドロイド・ニューワールドⅡ
すると、そこにエレベーターがやって来ました。

チン、と音を立てて、エレベーターの扉が開きました。

中には、誰もいません。

貸し切りですね。

紺奈局長が先に入り、何も言わず扉を押さえていてくれました。

私は奏さんの車椅子を押して、エレベーターに乗りました。

奏さんは、扉を押さえてくれている紺奈局長に、軽く会釈をしていました。

「二人は何階だ?」

「一階です」

「そうか。自分も一階だ」

と、紺奈局長は言いながら、一階のボタンを押しました。

紺奈局長も一階ですか。

「この後どちらに向かわれるのですか?」

と、私は尋ねました。

「1110番の様子も見たし、校内も一通り見て回った。もう帰ろうと思う」

と、紺奈局長は言いました。

成程、もうお帰りになられるのですね。

「そうですか。私達はこれから、一階で開かれている喫茶店に行く予定なのです」

「そうか」

「先程碧衣さんの宇宙人お化け屋敷に行ったところ、奏さんが腰を抜かしまして。ちょっと落ち着きたいとのことで、喫茶店でゆっくりしようと思います」

と、私は説明しました。

すると。

「言わないでよ…恥ずかしい…」

と、奏さんは顔を背けながら呟きました。

何か恥じるべきことがありましたか?

少なくとも、そのようなことは、私も紺奈局長も、全く気にしません。

その証拠に。

「そうか。あの1110番を見れば…人間なら、誰でもそうなるだろうな」

と、紺奈局長は真顔でそう言いました。

おっと、そうだ。

私は、紺奈局長に伝言があったのでした。

忘れていたとあっては、私と碧衣さんとの間で、戦闘が起きますね。

「紺奈局長。実は、碧衣さんから伝言があります」

「何、伝言?」

「はい。紺奈局長に会ったら伝えてくれ、と言われました」

「…何を?」

「『愛してる』だそうです」

と、私は言いました。

碧衣さんからの言伝は、確かに伝えました。

これで、碧衣さんもご満足でしょうね。

しかし。

「…」

と、紺奈局長は、無言で天を仰いでいました。

…大丈夫でしょうか?

何か不思議なものでも見えたのでしょうか。

あるいは、恋人である碧衣さんに、愛の言葉を伝えられ。

もしかしたら、紺奈局長も照れていらっしゃるのかもしれません。

つまり愛の言葉を伝えた私は、所謂恋のキューピッドということですね。
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