アンドロイド・ニューワールドⅡ
…私は、ごく普通に説明したつもりなのですが。

久露花局長のみならず、朝比奈副局長までもが、ポカンとしています。

まるで意表を突かれたかのように。

…私は、何かおかしなことでも言いましたか?

「今まで何だか、胸に異物感を感じましたが、そのときは必ず、奏さんと話していた前後です。もしや、奏さんが何か関係しているのでしょうか」

「え…!そ、それって…あれ…?もしかして…もしかしなくても…。…もしかしてるんじゃない?」

と、局長は言いました。

意味不明です。

何が、もしかするのですか。

「で、ですよね…私も、そう思います…」

と、朝比奈副局長は、局長の言葉に頷いていました。

朝比奈副局長には、局長が何を言っているのか分かるのですか。

私には意味不明なのですが。

「どういうことでしょう、久露花局長。ご説明をお願いします。私の身体のことなので」

「え、えぇと…それは…つまりだね、恋が芽生えた瞬間って言うか…」

「はい?」

と、私は聞き返しました。

何の芽生えですか?

「つ、つまりだね?それは異物が混入してるんじゃなくて、瑠璃華ちゃんの感情が反応してるってことだと思うんだよ」

と、久露花局長は言いました。

私の感情?

「私は『新世界アンドロイド』ですから、感情はありません」

「うん。でも君は今、その感情を学ぶ為に『人間交流プログラム』を遂行してるアンドロイドだよ」

と、局長は言いました。

更に。

「人間でも、感情が揺れたとき、こう…胸がチクチクすること、ってあるんだよ」

と、局長は続けて言いました。

そういえば、そのような記述を本で読んだことがありますね。

胸がチクチクするだなんて、なんと危険な感情だろうと思っていましたが。

私も、その感情の片鱗を感じ取っている、ということなのでしょうか。

いまいち実感が持てません。

「瑠璃華ちゃんも、『人間交流プログラム』を通して、人間の感情を学んでるから、人間らしい感情を感じるようになってるのかもしれないね」

と、局長は笑顔で言いました。

…成程、そういうことなのですか。

「つまり、私は異物が混入している訳ではないのですね?」

「そうだね。君が人間の感情を学習してる証拠だよ。大事にしてね」

と、局長に言われました。

大事にしなければならないもの、なのですか。

分かりました。

私には理解し難いですが、久露花局長がそう仰るなら、そうなのでしょう。
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