アンドロイド・ニューワールドⅡ
「え?胸に異物?」

と、局長は慌てて、胸部のスキャンを開始しました。

朝比奈副局長も、別のモニターを開いて確認を取ってくれました。

「何か気になることがあるの?」

「はい。時折、胸に異物感を感じることがあったので。何か混入しているのかと思いまして」

「それは良くないなー…。自力で検知して、除去出来ないほどの異物が、そう簡単に『新世界アンドロイド』の体内に入ることはないんだけど…」

と、局長は言いながら、パネルを叩いていました。
 
そうしている間も、無意識にチョコレートを摘んでいます。

あれはもう、局長にとって本能的な動きなのでしょうね。

定期的に糖分を摂取しなければ、局長は頭が働かないのでしょう。

仕方ありませんね。

車がガソリンで動くように。植物が光合成をして生きるように。

久露花局長は、チョコレートで生きているのでしょう。

世界は広いので、そういう人間も、たまには存在するのだと思われます。

「翠ちゃん、どう?何か見つかった?」

「いえ…こちらでは、何も発見出来ません」

「私の方も…これといった異物は見つからないなぁ」

と、局長と副局長は言いました。

そうですか。

「うーん…。見つからないなぁ。どうしても気になるなら、胸部切開して調べても良いんだけど…」

と、局長は難しそうな顔で言いました。

胸部切開ですか。

手術ですね。

「具体的にはどんな感じ?何か引っ掛かる感じ?」

「そうですね。チクチクする印象です。いつもではないのですが、たまに」

と、私は言いました。

「チクチク…。やっぱり何か挟まってるのかなぁ?でも、何も見つからないんだよね…」

「はい…。もしかして、異物ではなくウイルスでしょうか?」

と、副局長は聞きました。

ウイルスですか。

その可能性はありますね。

「ウイルスか…。有り得なくはないけど、『新世界アンドロイド』の身体に感染出来るほどのウイルスなんて、『Neo Sanctus Floralia』でもほとんど確認されてないよね」

「はい…。ましてや、瑠璃華さんはSクラスの『新世界アンドロイド』ですから、余程高度なウイルスでないと、体内に侵入することも出来ませんけど…。でも、これだけ見つからないと…」

「だよね…。ざっとスキャンしただけじゃ見つからないけど。どうしても気になるなら、時間をかけて徹底的に洗ってみようか?」

と、久露花局長は聞きました。

時間をかけて…調べてもらっても良いのですが。

「ちなみにその異物感って、どんなときに感じる、とか…何か条件はある?不意にいきなり感じる?」

「そうですね…。奏さんと話しているときに感じます」

と、私は言いました。

すると。

「…ふぇ?」

と、久露花局長はきょとんとして、首を傾げました。
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