アンドロイド・ニューワールドⅡ
2017番。

コードネーム『キルケー』ですか。

他局の『新世界アンドロイド』ですが、何度か面識はあります。

彼女が、三人目の『人間交流プログラム』の被験者となるのですね。

「何故、彼女が選ばれたのですか?」

「第1局の、橙乃(とうの)局長の希望でね。『人間交流プログラム』が効果を上げているという報告を聞いて、自分の局からも一人、被験者を出したかったみたいだね」

と、久露花局長は言いました。

成程。橙乃局長のご意向ですか。

「そこで、精神的にも安定していて、比較的早く、人間の感情を学習出来る素養がある…見込みがある『新世界アンドロイド』として、2017番が選ばれたらしい」

「らしい、ということは、それも橙乃局長の意向なのですか」

「うん。橙乃局長が決めて、2017番…キルケーちゃんも同意したらしいよ」

と、久露花局長は言いました。

…でしょうね。

2017番の性格を考えると、彼女が『人間交流プログラム』を勧められ、断ったり、嫌がったりするとは思えません。

それが、例えどのようなプログラムだったとしても、です。

「こう言っては何ですが、第1局の…橙乃局長は、他局に遅れを取ることを嫌がる傾向がありますので…。碧衣さんのいる第2局、そして瑠璃華さんのいる私達第4局で、『人間交流プログラム』が成果をあげていると聞いて、自局からも一人は参加させたかったのでしょうね」

と、朝比奈副局長は、苦笑いをしながら言いました。

そうですね。私もそうだと思います。

別に悪意がある訳ではありません。他局を蹴落としてやろうという意志もありません。

ただ橙乃局長は、無意識なのか、意識しているのかは分かりませんが。

非常に、負けず嫌いな性格なのです。

そしてその負けず嫌いの性格は、彼女の造った2017番にも、そっくり受け継がれています。

「それで瑠璃華ちゃん。君は名実共に、先輩になる訳だ」

と、局長は言いました。

「『人間交流プログラム』の先輩ですか」

と、私は言いました。

これまでは、『人間交流プログラム』に参加しているのは、私と碧衣さんの二人だけだったので。

碧衣さんが先輩、私が後輩という関係でしたが。

これからは、私は先輩でもあり、後輩でもあるという、微妙な立場に立たされる訳です。

人間であったら、真ん中の子はグレる、などという迷信が、まことしやかに囁かれていますが。

あれは本当なのでしょうか。

本当だとしたら、私もグレる可能性があります。

「そうだね。『人間交流プログラム』の先輩であり…そして、君の通ってる星屑学園においても、瑠璃華ちゃんは先輩になるんだよ」

と、久露花局長は笑顔で言いました。

…何ですと?
< 259 / 467 >

この作品をシェア

pagetop