アンドロイド・ニューワールドⅡ
「さて、次はどの屋台に向かいましょうか」

「そうだな…。今度は運試しに、くじ引きでもどう?」

と、奏さんは言いました。

くじ引き?

「そんな屋台があるのですか?」

「うん。結構定番だよ。ほら、あれ」

と、奏さんは一軒の屋台を指差しながら言いました。

その先には、たくさんの紐が並んでいます。

紐の束には仕切りがあって、その向こうに、景品らしきものが繋がっています。

成程。

見たところ、あの中から紐を一本選び、その先に繋がっている景品が当たる、という仕掛けですね。

「やってみる?」

「えぇ、興味深いですね。やってみます」

と、私は答えました。

何事も、やはりまずは、経験してみなければ分かりませんから。

屋台のおじさんに料金を支払って、いざくじ引きが始まりました。

この中から一本を選んで、景品を当てるそうです。

「どれにしよう…。…うん、やっぱりこういうのは直感だよな」

と、奏さんは呟きました。

そして。

「よし、これにしよう!」

と、奏さんは一本の紐を選びました。

絡まり合った紐の先を、ゆっくり辿っていくと。

そこには。

「はい、お兄ちゃんはキャラメルねー」

と、屋台のおじさんは言いました。

そして、奏さんにキャラメルの小さな箱を渡しました。

「キャラメル…うん…。まぁ、そんなことだろうと思ってた」

と、奏さんはちょっと残念そうに呟きました。

キャラメルですか。

スーパーで買っても、百円足らずですね。

ちなみに、このくじ引きの料金は、一回500円です。

そう思うと、奏さんは元を取れなかったことになります。

奏さんが落ち込むのも、無理もないでしょう。

「一回の料金が500円…。となると、元を取るには、やはり500円以上の景品を当てたいですね」

「そうだね。でも、こればかりは運だから…」

「そうでしょうか?」

「え?」

と、奏さんは振り向いて、首を傾げました。

確かにこのくじ引き、一見運のように見える…と言いますか。

人間の視力であれば、絡まり合った紐の先を、目視で辿ることは出来ませんが。

『新世界アンドロイド』の視力であれば、注意深く見れば、紐の先を判別することが出来ます。

そして、この場に並べられた景品のラインナップ…。

「奏さん。この中で、一番の高額景品はどれだと思いますか?」

「え?そうだな…。やっぱり…あの家庭用ゲーム機かな?」

と、奏さんは箱に入ったゲーム機を指差しました。

成程、あれですか。

「分かりました。では、あのゲーム機に繋がっている紐は…」

と、私は言いながら、視界をズームして、絡まり合った糸を一本ずつ、判別し始めました。

あれは違いますね、こちらも…これも…。

しばらくそうやって、判別を続け。

「…えーと、瑠璃華さん?そろそろ…」

「はい、見つけました。これですね」

と、私は選ばれし一本を掴みました。
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