アンドロイド・ニューワールドⅡ
「…また、琥珀さんからメールだ」

と、奏さんは言いました。

授業と授業の合間の、休み時間のことです。

「また」と奏さんが言うのは、あの琥珀さんは、一日に何通も、奏さんにメールを送ってきているからです。

「…今日は何と?」

「放課後に、一緒にファミレスでお喋りしようって…」

と、奏さんは言いました。

…そうですか。

相変わらずですね。

「何かしら、毎日誘ってきますね」

「そうなんだよ。毎日何かに誘われる…」

と、奏さんは言いました。

琥珀さんがこの学校に来てから、二週間。

琥珀さんは毎日、何かしらの誘いを、奏さんに持ちかけています。

クレープ屋に始まり、ショッピングモールだの、映画館だの…。

しかも、聞いたところによると。

琥珀さんがチケットを予約した映画は、なんと恋愛モノだったそうです。

だから何だ、とは思いますが、何故かそれを聞いたとき、私は内心舌打ちを禁じ得ませんでした。

理由は、やはり不明のままです。

更には、休日まで誘われているそうです。

あそこに行こう、ここに行こう、と。何度もしつこく。

実に厚かましい行為です。

それでも、私が落ち着いていられるのは。

「今日はバドミントンの日だから。断ろう…」

と、奏さんはスマートフォンを操作しながら言いました。

そう。こうして、奏さんが琥珀さんの誘いを、拒否しているからです。

琥珀さんが誘いを断られているのを見ると、溜飲が下がる思いです。

最近ではこうやって、奏さんも、拒否することを覚えています。

そのお陰で、私は何とか平静を保っています。
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