アンドロイド・ニューワールドⅡ
いつもなら、一時間目の授業が始まっている、という時間。

私達は、グラウンドに集まっていました。

そこには、見慣れない大型のバスが、何台も停まっています。

他のクラスの皆さんも、本日は遠足ですので。

これらのバスに乗って、目的地に向かうものと推測します。

向こうに、琥珀さんもいますね。彼女もこれらのバスに乗って、芋掘りに向かうのでしょう。

琥珀さんも手ぶらのように見えます。きっと私のように、一抹の不安を覚えていることでしょう。

お互い、無事に目的を果たして帰還出来れば良いのですが。

やはり、電気ショッカーくらいは、持ってきても良かったのでは?

と、今更後悔しても遅いですね。

深海魚水族館や、爬虫類の館のときもそうでしたが。

奏さんは、少々危機管理意識に欠けているものと思います。

楽観的であることは、人生を楽しむ秘訣ではありますが。

しかしあまりに楽観的であると、いつかその楽観的思考に足をすくわれ、痛い目を見ることになります。

気を付けた方が良いでしょう。

さて、それはともかく。

いつもなら、教室で授業を受けている時刻だというのに。

こうして、校庭で何台も並ぶバスを見ていると、いつもとは違う気分ですね。

周囲にいるクラスメイト達も、心なしかはしゃいでいるように見えます。

桃狩りが楽しみなのでしょうか。

狩りを楽しむ高校生…かなり物騒ですね。

最近の高校生の、流行りなのかもしれません。

「ご安心ください、奏さん」

と、私は傍らの奏さんに言いました。

「え、何どうしたの、いきなり」

「本日は素手ではありですが、私は『新世界アンドロイド』です。凶暴な桃相手でも、見事素手で掴み取りしてみせましょう」

と、私は胸を張って言いました。

取っ組み合いなら、『新世界アンドロイド』の特技です。

我々の腕力を前に、いかに凶暴な桃であろうとも、手も足も出ないことでしょう。

「…うん。瑠璃華さんは、桃を一体何だと思ってるの?」

「?桃は、川から流れて来るのでしょう?」
 
「…」

「そして、その桃の中には、鬼を殺した凶悪な殺人犯が潜んでいるそうです。危険ですね」

「…」

「しかも一節によると、その桃を切ると、何十年も時が経ってしまう恐れがあるとか」

「…」

「でも、食べると美味しいのですよね?大変興味深い食べ物です、桃とは」

と、私は言いました。

すると。

「…もう、ツッコミどころが多過ぎて…。実物を見せるしかないな…」

と、奏さんは遠い目で呟きました。

私も、実物を見るのが楽しみです。

腕が鳴りますね。
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