アンドロイド・ニューワールドⅡ
しばらくして、私達は、バスに乗り込みました。

「奏さん、私の隣に座りましょう」

と、私は言いました。

どうやら席順は決まっていないようで、皆さん好きなところに座っているようですので。

我々も、好きなところに座りましょう。

しかし。

「あ、でも俺は…車椅子のまま、通路に乗ってるから…」

と、奏さんは困ったように言いました。

成程、そうですか。

更に。

「ん…?あぁ、ちょっと…スロープ持ってくるから」

と、バスの運転手は、こちらを見て言いました。

奏さんが車椅子に乗っているのを見て、スロープが必要だと思ったのでしょう。

その心遣いには感謝しますが、しかし運転手は、いかにも面倒臭そうな表情をしています。

その運転手の態度を見て。

「…」

と、奏さんはいたたまれない様子で、目を逸らしました。

成程、そうですか。

そういう方が多いから、奏さんは肩身の狭い思いをすることになるのですね。

理解しました。

私は事前に言いました。

皆さんに、ご迷惑はかけないと。

従って、誰にも迷惑をかけない方法を取るまでです。

「では行きましょう、奏さん」

「え、行くって…?スロープを持ってきてもらわないと、俺バスに乗れな、」

「よいしょ」

「!?」

と、奏さんは驚愕の表情を見せました。

何のことはありません。

私が、奏さんを車椅子ごと抱え上げたのです。

これには、スロープ板を出そうとしていたバスの運転手も、口をあんぐりと開けていました。

大丈夫でしょうか。

「ちょ、ちょちょちょ、瑠璃華さん!?」

「成程。バスは大型で、席もたくさんありますが、通路は狭いですね」

と、私は呟きました。

これでは、奏さんが乗るのは難儀するでしょう。

しかし、私がいるからには、何の心配も要りませんね。

「出入りがしやすいよう、前の席に座りましょう」

「ちょ、いや、はず、恥ずいから!降ろして!降ろしてって!」

と、奏さんは喚いていました。

恥ずいとは何ですか。

「はい、降ろします」

と、私は言いました。

そして、車椅子を通路に降ろし、ついでに奏さんを抱え上げて、座席に移動させました。

「ちょ、えぇぇぇ」

「これで、目的地まで一緒に行けますね。宜しくお願いします」

と、私は言いました。
< 457 / 467 >

この作品をシェア

pagetop