アンドロイド・ニューワールドⅡ
そうこうしているうちに。

ようやく、バスが発車しました。

出発進行、ですね。

いざ桃狩りの旅へ。

漫画でしたら、「このときの私達は、この先にどのような多難が待ち受けているか、知らなかったのです…」という字幕が出るところですね。

油断大敵です。

「…瑠璃華さん…」

と、奏さんは私に声をかけました。

「はい、何でしょう?」

「あのさ…。抱え…抱えてくれるのは有り難いんだけど…」

と、奏さんは放心したように言いました。

「ちょっと、いやかなり恥ずかしいって言うか…」

「恥ずかしい?何がですか?奏さんは何も恥じることなどないはずです」

「う、うん…まぁ、瑠璃華さんはそうかもしれないけど…。女の子に抱えてもらうのって、男としてはどうも…。…いや、運動会でアレを晒してる以上、もう今更なんだけど…」

と、奏さんはブツブツと言いました。

大丈夫でしょうか。

何か不思議なものでも見えたのでしょうか。

運動会のアレって何ですか?

「腕…そう、腕は痛くないの?瑠璃華さん、力持ちだけど…。車椅子込みで運んでたら、重いでしょ」

と、奏さんは聞きました。

私の腕を心配してくださっているのですね。ありがとうございます。

しかし、その心配は無用です。

「問題ありません。何度もご説明したように、私の積載可能量は、通常モードでも300キログラムはありますから」

と、私は言いました。

奏さんなど、車椅子込みでも、100キログラムにも満たない重さです。

何なら、片手で持ち上げられます。

「奏さんがあと三人いても、問題なく運搬可能です。ご安心ください」

「そ、そっか…。頼もしい…頼もしいんだけど、男としては複雑な気分…」

と、奏さんは呟きました。

どういう意味でしょうか。
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