アンドロイド・ニューワールドⅡ
そのまま、バスは小一時間ほど走り続け。

やがて、目的地に到着しました。

私は、来たときと同じように、奏さんを抱えてバスを降りました。

「は、はぁ…。恥ずかしかった…」

と、奏さんはボソッと呟いていました。

何がはずかしいのか、尋ねても良かったのですが。

私には、それ以上に気になることがありました。

それが何かと言いますと。

「…奏さん。これは一体どういうことでしょう」

「え…な、何…?」

「近くに、川が見当たりません」

と、私は言いました。

人が一人入れるほどの、巨大な桃が激流に沿って流れてくるのですから。

きっと、ナイル川のように大きな川があると思っていたのに。

何処にも、川が見当たりません。

そもそも、水源らしきものすら見当たらないのです。

これはどうしたことでしょう。

それどころか、ただ木々が生い茂る、まるで農業地帯のような景色が広がっているだけです。

「私達は、乗るバスを間違えたのでしょうか?」

「いや…間違えてないよ。湯野さんも、佐賀来先生もいるじゃん、ほら」

と、奏さんは言いながら。

バスを降りて、悪癖お友達一行とぺちゃくちゃ喋っている湯野さんと、運転手と帰りの時刻について話し合っている佐賀来教師を指差しました。

本当です。お二人がいるということは、私達は乗るバスを間違えた訳ではなさそうです。

それに、周囲には他にも、1年Aクラスのクラスメイトの姿が見えます。

乗るバスは、間違えていないのですね。

ならば、考えられる可能性は…。

「ね?だから言ったじゃん。桃狩りは、別に危険なものなんかじゃないんだよ。木に成ってる桃を切るだけで、」

と、奏さんは言いかけましたが。

私は既に、別の可能性を考えていました。

「成程、理解しました。運転手が、うっかり行き先を間違えたのですね」

「…頑なに認めようとしない…。何?その意地は…」

「行き先は鬼ヶ島であると、きちんと伝えていなかったが為に、このようなことに…」

「あぁ…瑠璃華さんの勘違いが甚だしい…。いっそ、このまま訂正しない方が良いんじゃないかとすら思えてくる…」

と、奏さんはブツブツと呟いていました。

仕方ありません。運転手も、人間ですからね。

人間なら、時に間違えることもあるでしょう。

おおらかな気持ちで、他人の失敗を許す寛容さが大切です。
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