アンドロイド・ニューワールドⅡ
「どうぞ奏さん。私が持ち上げている間に、桃を狩って下さい」

「ちょ、ちょちょちょ。何やってるの瑠璃華さん!?」

「?奏さんを持ち上げています」

「はず、恥ずかしいから降ろして!皆見てるから!」

と、奏さんは赤面して叫びました。

皆が見ている…?

「人気者の証ですね」

「何でちょっと嬉しそうなの!?」

「早く桃を狩り…あ、成程、これは小さいですからね。ちょっと移動しますね」

と、私は言いながら、奏さんを抱えたまま移動しました。

「どれが良いですか?右でも左でも指示してください」

「いや、大丈夫だから!降ろして!」

「あ、ほらあっちの方が大きいですよ。行きましょうか」

「あぁぁぁめっちゃ恥ずかしい!」

と、奏さんはきゃんきゃん喚いていました。

きっと、初めての桃狩りに興奮しているのですね。

そういうこともあります。

「どうぞ、お好きな桃を狩ってください」

「分かった。狩る狩る!狩るから降ろして!」

「狩ってから言ってください」

と、私は言いました。

すると。

「うぅ…。女の子に抱えられて桃狩りなんてやってるの、俺くらいだろうな…」

と、奏さんは言いながら、桃をチョキンと切りました。

ぽてん。

よし、狩れましたね。

私は、奏さんを車椅子に戻しました。

「お疲れ様でした。楽しかったですか?」

「…うん…。楽しかったって言うか…恥ずかしかったよ…」

と、奏さんは顔を押さえて言いました。

「自分で収穫した桃は格別ですよ」

「…そうだね…」

と、奏さんは言いました。

奏さんが桃狩りを楽しんでくださって、本当に良かったです。

一緒に遠足に来た甲斐がありますね。

「お土産に、いくつか持って帰って良いそうですから。琥珀さんや碧衣さん、それから久露花局長の分も、収穫するとしましょう」

「…うん…」

「奏さんも、お土産分の収穫をしますか?もう一度持ち上げ、」 

「あぁぁ俺はもう良い!もう良いから!お土産持って帰る相手もいないし!大丈夫!間に合ってます!」

と、奏さんは物凄い勢いで遠慮しました。

奏さんは謙虚ですね。

では、私は遠慮なく。

お土産分の桃も、収穫するとしましょう。
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