望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「なんだ」
 冷たい視線が降ってくる。

「その。お手を煩わせてしまい、申し訳ございません」

「そう思うのであれば、今はゆっくり休むことだな」
 レイモンドは腕を組んでカレンを見下ろすと、黙ってその部屋を出ていく。その後ろをアドニスが追っていく。

「では、お食事の準備をいたしますね」
 メアリーが口元に笑みを浮かべて、そう言った。
 カレンは一人部屋に残されたが、昨日の夜からの記憶はなかった。そのない記憶の中で気になっているのは、あの黒豹のこと。怪我は治ったけれど、どこに行ってしまったのか。ここにいた誰もが口にしないということは、昨夜のうちに出て行ってしまったのだろうか。それともやはり、あの出来事は夢だったのだろうか。

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