望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「それは、私も考えていることだ。だが、彼女の魔力が関係しているのではないか、と思う」

「魔力」
 アドニスが呟く。まさか、義姉が魔導師であるとは思っていなかった。二日前の兄の怪我は酷いものだった。獣化したレイモンドは人型に戻ることもできなかった。その兄を屋敷の中にいれようとアドニスが準備をしている間に、獣化したレイモンドがカレンに見つかってしまった。彼女はバルコニーからふわっと飛び降りると、獣化した兄を連れてまたふわっと戻った。あの義姉がそんなことできるとは思っていなかったので、思わず見とれてしまった。
 だが彼女の力はそれだけでなかった。兄の怪我を容易く治してしまったのだ。ダレンバーナの魔導師でも治癒魔法を使えるのは、かなり少数であると聞いているが。

「恐らく。何かしらの魔力で彼女は護られている。だから、ダレンバーナとしても彼女が魔導師であることに気付いていない」
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