望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 いつもより長い会話をしたかもしれない。だけど、最後はいつもの通り「はい」で終わってしまった。彼に意見をすることなど、許されるわけがない。

 大きく息を吐いて自室へと戻る。社交界というだけでも気が重いのに、もっと気が重い原因はドレスだった。カレンはダレンバーナからこちらにくるときに、トランク一つの荷物しか持ってきていない。それは生活するうえでの必要最小限の荷物。それから、少しばかりの娯楽。つまり、本。

「奥様」
 メアリーに声をかけられ、はっと顔をあげる。
「三日後のパーティの件ですが、ドレスを合わせたいのです。今、お時間はよろしいでしょうか?」

「え、ええ。でも、私、ドレスを持っていないのよね。向こうから、その、持ってきていないから」

「奥様。その件に関しましては御心配には及びません」
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