望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 メアリーに連れられ、別室へと案内される。この部屋は、この屋敷に来てから一度も足を踏み入れたことがない部屋だ。そもそも、カレンはこの屋敷の自室と書庫ぐらいしか足を運ばない。あとは食堂と応接室、くらいだろうか。

 メアリーに案内された場所は衣装部屋だった。

「奥様、好きなドレスをお選びください。旦那様が、奥様のために揃えてくださったものです」

「え?」
 そこには、まだ数は揃っていないものの、いくつかのドレスが並んでいた。

「旦那様が、ですか?」
 カレンは思わず聞き返してしまった。メアリーは「はい」と頷く。
 カレンが一番手前にあったそれを手にするが、それらがとても上質であることを感じた。質感、光沢、デザイン、それのどれをとっても。
「どのドレスも奥様にお似合いになるかと思うのですが。王太子妃殿下主催ということですので、こちらのドレスはいかがでしょうか」

< 114 / 269 >

この作品をシェア

pagetop