望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 言いたいことはそれだったのか、と思う。ダレンバーナの女として恥じない振舞とはどのような振舞か。
 カレンは「はい」とだけ返事をする。この姉のように我儘に振舞えばいいのか。夫を見下せばいいのか。何がダレンバーナの女なのだろう。
 カレンの返事を聞いて満足そうに頷いた王太子妃は、また別な場所へと移動する。
 カレンはほっと胸をなでおろすと同時に、何か不穏な空気を感じ取った。飲み物を手渡そうとしている給仕の手から目が離せない。

「旦那様」

「どうかしたのか?」

「これから、私はダレンバーナの女として振舞います。それはジェルミー公爵夫人の振舞としてはふさわしくありません。もし、旦那様がお気づきになられたのであれば、その後のフォローをお願いいたします」
 カレンがレイモンドに対してここまで意見を言ったことは初めてだった。だからか、レイモンドはカレンの言葉の意味がよくわからなかった。だが彼女はなにかやろうとしていて、それの事後処理を頼んでいるということだけはわかった。

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