望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 彼女は給仕から飲み物を一つ受け取ると、つかつかと歩いていく。彼女が向かった先は、レイモンドの部下でもあるメイリンク侯爵とその夫人だ。夫人が手にしていたグラスを口元に運ぼうとしたとき、カレンは彼女にわざとぶつかった。夫人が手にしていたグラスの中身は勢いよくこぼれた。

「ちょっと、何をなさるの」

「ごめんなさい。道を塞がれて邪魔だったもので」
 カレンは艶やかに笑った。「地味なドレスに素敵な模様ができて、良かったのではなくて?」
 そこでカレンは、手にしていたグラスを口につけた。

「カレン」
 レイモンドが妻の名を呼ぶ。「メイリンク夫人。妻が失礼した。申し訳ない」
 そこでレイモンドはハンカチを差し出した。
「ロバート。気休めにしかならないが、これを使ってくれ。そして、()()を調べておけ」
 周囲に聞かれないように、レイモンドは部下の耳元で囁いた。

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