望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「いいから、黙って我々に付いてこい。その、後ろの娘も一緒にな」

「娘は魔導師ではないわよ? いらないでしょ」

「魔導師でなくても、お前の娘ということだけで利用価値はある」
 その言葉を聞いたときに、母親は苦々しくため息を吐いた。
「カレン、準備をしなさい」
 凛とした母の声に「はい」とだけ答える。鞄一つの荷物。それ以外は置いていく。そして母親の大事な魔導書はこの家に隠しておく。

「母親と違って娘は素直だな」
 偉そうな男がニタリと笑った。
「おい、こっちは大事な娘だから丁寧に扱えよ。間違っても手を出すな」

 偉そうな男の部下が荷物を預かると、カレンにそっと手を差し出した。これはエスコートのつもりなのだろうか。慣れないながらも、カレンはその手をとった。その男は、とても線の細い男だった。

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