望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「豹? 黒い豹? え?」
 カレンは思わず呟いてしまった。
 なぜならばその黒いモノと目が合ってしまったように思えたのだ。花の影に隠れるようにしているそれが、その花の隙間からカレンを見つめているかのように。
 カレンはすっとその黒いモノに手を差し伸べた。
「こちらにおいで」

 この庭に豹がいること自体が不思議であるが、それでも自然に「おいで」と呼び寄せてしまったことも不思議だった。恐ろしいモノではないとカレンが直感的に思ったから。むしろ、触れたいと。

「奥様。危ないですから、下がりましょう」
 メアリーはカレンの身を案じているのだろうか。
「大丈夫ですよ」
 カレンの口から出た言葉はそれだった。

 咲き誇る花の影に隠れるようにしていたそれは、ゆっくりとカレンに近づいてきた。
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