望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「君に、会いたかった」
 いや、ついさっきまで一緒にいましたよね、とカレンは心の中で思った。
 でも、このように力強く抱きしめられてしまっては、何もできない。

「あの、旦那様。苦しいので、離していただけないでしょうか」
 それだけ言うのでせいいっぱい。

「ああ、すまない」

 彼女の言葉で冷静になったのか、ぱっとレイモンドは離れた。

「その、食事の準備をと思って、外に行っていた」
 何かに言い訳するかのように彼は言い、落とした食材たちを拾うために膝を折る。カレンも同じようにその場にしゃがみ込んで、落ちた食材を拾う手伝いをする。
 手を伸ばした時に、偶然にもレイモンドとの手と触れてしまった。
 そして、目が合う。
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