望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 はっと意識を取り戻したとき、目の前には再びレイモンドの顔。初めて顔合わせをしたときの、あの怒ったような顔ではなく、とても柔らかい表情を浮かべていた。

「運命の(つがい)、ですか?」
 カレンは目の前のレイモンドに対して思わず聞き返してしまった。

「今更、こんなことを言っても信じてもらえないかもしれないが。君は、私の運命の番だ」
 隣で寝ているレイモンドは、カレンの髪を手ですくうと、そこに口づける。
 そんな言葉を発するレイモンドとは逆に、カレンの心は非常に落ち着いていた。もしかしたら、その言葉を受け止め切れていない、というのが大きいのかもしれない。むしろ、信じられないという思い。

 運命の番――。
 カレンでさえも耳にしたことはあるその言葉。獣人は本能的にそれがわかるらしい。だが、獣人ではないカレンにはわからない。
 わからないから、わからない。自分の気持ちが、思いが、考えが――。

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