望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「旦那様。長旅でお疲れになったでしょう。気がまわらなくてごめんなさい。今、お茶を淹れますので、どうぞそちらにお座りください」

 この状態のカレンは心強くもあるが、少し怖い。心が通じ合ったと思っていたのに、まだ彼女には別な姿があるとでもいうのだろうか。
 カレンは静かにお茶を淹れ、それをレイモンドの前に置いた。自分もカップを手に取ると、レイモンドの向かい側に座る。
 カレンは優雅にカップを口元まで運ぶ。レイモンドはその仕草に見とれてしまう。彼女の洗練されたそれは、たった一年で身に着けた振舞であるとは思えない。

「旦那様。考え方をかえましょう。今、この状況はチャンスですよ」

「チャンスだと?」

「ええ。ローゼンフェルドの騎士のみなさんが、お休みなさっているのですよね。その騎士団を」

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