望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 アドニスが言うと、メアリーとジョンソンは承知しましたと言って離れる。広い食堂にアドニスと二人きり。家主は不在。

「義姉さん。兄さんと何かありました?」
 朝食をとりながら、する会話はそんな会話。

「何か、とは?」
 カレンは小首をかしげた。

「いえ、なんでも」
 そして黙ってパンを口に運び入れるアドニス。柔らかいパンなのに、なかなか喉元を通り過ぎて行かないのは、胸まで出かかっている言葉がつかえているからだ。やっとの思いでパンを飲み込む。そして、飲み込まれなかった言葉を吐き出す。

「義姉さんからは、血の匂いがします」

「ええ、そうね」
 否定はしない。それは間違いなく事実。

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