望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 あの王妃を殺して、自分も死ぬ。

 それが、一年半も前から彼女が望んでいたこと。
 だけど今、それの決行を考えると、心の奥がザワザワと音を立てる。そして、なぜかレイモンドの姿が思い浮かぶ。
 彼を残しては死ねない、と、心のどこかがそう騒いでいた。

 出会わなければよかった。最初から出会わなければ、こんなに迷う必要も無かったのに。

 母親を失い、意思を奪われ、まるで色の無い世界に放り込まれたような気分だった。
 その色の無い世界で唯一色づいていたのは、王妃への復讐の心。赤くて黒い色。くすんだ赤。そこだけが真っ白い世界の中で、唯一色があった。

 だけど。
 このローゼンフェルドに来てからは、カレンの世界は少しずつ色を取り戻していった。初めは利用しようと思っていたアドニス。アドニスは幼いながらも、逆にカレンを利用しようとしていた。その駆け引きが楽しかった。
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