望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 ダレンバーナとローゼンフェルドが再び不可侵条約を結んだのは、それからすぐのことだった。
 ダレンバーナの王は、カレンとその婿をダレンバーナに迎え入れたいと懇願した。だが、カレンはそれをやんわりと断る。自分たちには帰る家が、そして待っている人がいるから、と。ダレンバーナに捕らわれていた獣人たちも、ローゼンフェルドへと戻る。だが幾人かは、このダレンバーナに残ることを望んだ者もいると言う。それは、そこで築き上げた情によるもの。

「カレン」
 メアリーと庭を散歩していたカレンは、名を呼ばれて振り返る。

「今、戻った」

「お帰りなさい、旦那様。ダレンバーナとの外交はいかがでしたか?」
 ゆっくりとカレンはレイモンドの元へと歩み寄る。

「ああ。何も問題は無い。王太子殿下も、二つの国の交流については乗り気だからな。私の出る幕など、なかったよ」
 おどけたようにレイモンドは肩をすくめた。
< 268 / 269 >

この作品をシェア

pagetop