望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 当時、経済大臣を担っていた父は、敗戦と同時に処刑された。それは父だけではなかった。当時のローゼンフェルドの要人たちは軒並みダレンバーナの手によって処刑されたのだ。母は、その後を追った。幼い息子を置いて。とにかく、弱い人だったのだろう。

 だからこそ、レイモンドはダレンバーナの人間が許せない。戦争だって仕掛けてきたのは向こうの方だ。何年か前に結んであろう不可侵条約を破って。
 それにも関わらず、今度は嫁を送り込んできた。自分よりも一回りも若い娘だ。若ければいいという問題でもないし、何よりもダレンバーナの女というところが気に食わない。

 だったら、さっさとこちらの適当な女と婚姻関係を結べばよかったのではないか、と散々言われてはいたが、それも気がのらなかった。
 レイモンドには忘れることのできない女性がいる。たった一度会っただけの女性。

 ――私は運命の女性に出会ったのだ。あの女性が運命の番だった。

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