望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 その炎が森を焼き、家を焼き、動物を焼き、人を焼いた。いろんなものを焼き尽くした。ただ、カレンたちの小さな家があるこの森だけは炎に包まれることはなかった。人が住んでいるとは思われていないのだろう。そのくらい辺鄙な場所なのだから。

 住処を失い怪我を負った動物たちが、ときおりカレンたちの家へとやってきた。母親と一緒にその怪我を治してあげることもあった。だけど、その怪我が治った彼らは、焼かれた森には戻れない。他の住処を探して、どこかへと立ち去って行った。どこへ行ってしまったのか、カレンは知らない。ただ、彼らの無事を祈るのみ。

 戦争も始まって十月(とつき)ほど過ぎたころ。
 一匹の黒くて大きな豹が、よろよろと現れた。これも森を焼かれた動物たちのうちの一匹なのだろうか。
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