望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 カレンのその言葉に、豹はこの怪我をつけた人物を思い出す。あれは、そんな下級の魔導師ではなかったはずだ、と。
 そう思っていたら下半身に重みを感じた。驚いてそちらに顔を向けると、カレンが寄り掛かっている。
「ごめんね。今日、ずっと魔法陣を描いていたから、魔力が……」
 その続きの言葉を聞くことはできなかった。コトリと彼女の力が抜けたのが分かった。ズシっとより一層の重みを感じた。
 静けさが生まれる。
 それを見計らったかのように、隣の部屋との続きのドアが開いた。

「相変わらず兄さんは、何をやっているんですか」

「だから、私は何もしていない。全てはこの女が勝手にやったことだ」

「ふーん」

 アドニスが疑いの視線を向けながら、黒豹の下半身へとまわった。昨日の後ろ脚の怪我はすっかりと治っている。

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