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「その時、朱君とは話してて気が合ったのもそうだけど。
うさぎの話で、盛り上がって」


「うさぎ?」


「俺、うさぎ飼ってんだけど。
朱君も昔、うさぎ飼ってたって」


そう言われて思い出すのは、
私と蒼君が過ごした、あの児童養護施設にあった、うさぎ小屋。


園庭にあるうさぎ小屋には、5匹のうさぎが居た。


「それでかな?スッゴク朱君とは仲良くなって。
彼、うさぎの爪切り出来るって言うから、月に一度、うちに来て貰ってうさぎの爪切って貰ってて。
逆に、俺が朱君の家にうさぎを連れて行く事もあるんだけどね。
それまで、近くの動物病院で切って貰ってたんだけど、
病院って、けっこう待ち時間もあるし、犬とか猫の鳴き声で、うちのうさぎストレスだったみたいで」


私の知っている蒼君も、うさぎの爪が切れた。


蒼君に言われ、うさぎを私の膝に乗せて動かないように固定して、彼が専用の爪切りでうさぎの爪を切っていた。



「私、もう、彼の事を蒼君だとか言わないので。
上杉朱さんに、もう一度ちゃんと話せる機会が欲しいと伝えてくれませんか?」


昨日、蒼君に会った事は、あえてこの人に話さなくていいだろう。


重要なのは、私がもう上杉朱の正体を暴かないと、蒼君に伝えてもらう事。


永倉さんが言ったように、蒼君がもし本物の上杉朱を殺していたら…。


私は蒼君にとって、危険因子なのかもしれない。


だけど、私は、そうじゃないのだと、蒼君に知って貰いたい。


私は、蒼君の恋人ではなかったとしても、
今でも私は彼の一番の味方だから。


「ねぇ、こうやって俺から色々聞いて。
ご褒美とかくれないの?
そのご褒美次第で、それを朱君に伝えてあげる」


永倉さんとは違い、いまいちこの人の誘いは本気なのか分かりにくいけど。


「じゃあ、うさぎ見せて下さい。
一枝さんの家、すぐそこなんですよね?」


そう言うと、いいよ、と笑っている。

その顔が色っぽくて、ドキっとした。
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