シンガポール・スリング
第一病院は都内屈指の総合病院で、最先端の医療のみならず、セキュリティーに定評があり、各界の大物がこの病院を利用していた。
ここの医院長とレンの父親ウェイ・リンが昔からの友人ということもあって、家族ぐるみの付き合いをしていた。
入り口でのチェックが終わると、エレベーターに向かい7階を押した。
エレベーターのドアが開くとすぐに待っていた優美が駆けつけ、レンを抱きしめた。
「ナイナイ、遅くなってすみません。大丈夫ですか」
「私は平気。お医者様の話を聞きたいでしょ?一緒に行きましょ」
とても若い救命救急の先生だったのだけど、しっかりされていてこの人なら任せられると思ったの。レンも直接話してみたらいいわ。担当医にはならないけど、顔を出すようにしますって。
「・・・・若い救命救急医?」
ハンサムさんでね、話し方がとっても丁寧だったの。私のような老人に対してあんなに真摯に説明してくれる医者、そういないんじゃないかしら。
「その医者の・・・名前を聞きましたか?」
もちろん♪上村先生っておっしゃってね・・・ここの病院の・・・
レンは名前を聞いたとたん、眉間にしわを寄せ、大きくため息をついた。
「上村先生なら知っています・・・・・ナイナイも知っているでしょう?高校の時何度かうちに来たこともあったんですが」
「あら?そうだったかしら?・・・・高校の時のレンのお友達?・・・とりあえずまた来るって言ってたからここで待ちましょ。未希子さんも寝ていることだし、状況を聞いておかないとね」
ナイナイ・・・あの・・・・もう遅いですし、宮本を下に待たせていますから、お帰りになったほうがいいかと。
「あらどうして?上村先生は大丈夫だっておっしゃってくださったけど、いろいろときちんと聞きたいもの。それに上村先生、本当にハンサムさんだったのよ。レンのお友達ならもう一度お会いしたいわ。でもあんなハンサムさんが未希子さんの担当医にならなくて本当によかったわ。未希子さんが好きになってしまわないか逆に心配ですもの」
「・・・・・」
「まぁ、このまま帰ったんじゃあ、気になって眠れないと思うし」
・・・・そうですね。なら座って待ちましょうか。
二人はナースステーション脇の椅子に腰かけ、医師が来るのを待った。10分ほど経った時、エレベーターが開き、中から若い男性医師が何か看護師に指示しながら歩いてきた。