結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 月日は流れて、十一月。

 妊娠五か月になった凛音のおなかはもう洋服を着ていてもわかるほど大きくなった。つらかったつわり症状も嘘のように消え、食欲は増すばかりだ。

「わぁ、紅葉が見頃ですね」

 弾んだ声で、凛音は隣に立つ龍一を見やる。

 秋の軽井沢は赤や黄色に色づいていて、どこを切り取っても絵になりそうだ。目の前に広がる湖を眺めながら、龍一もうなずく。

「いい季節に来れてよかった。あとでボートに乗ろうか」
「はい!」
「まずは荷物を置こう」

 車のトランクからボストンバッグを取り出した彼は、小じんまりとしたアンティークホテルのような建物へと足を向ける。

 赤茶色のレンガの壁に深緑の三角屋根。世界各地にたくさんある水無月家の別荘のひとつだ。

「そうそう訪れる機会もないから、別荘など処分してしまってもいいんだが……ここはわりと気に入ってる」

 言いながら龍一は鍵を開ける。

 管理はしっかりしているようで、家のなかはチリひとつなく清潔に整えられていた。

 インテリアもクラシックだ。赤い絨毯の敷かれた廊下を進んだ先のリビングには、大きな暖炉とゴシックで重そうな応接セット。古い洋画に出てきそうな壁掛けの電話に、同じくらいレトロなグランドピアノもある。

 凛音はそれらに目を細めて、つぶやいた。

「懐かしい……ですね」
「覚えていたか」
< 104 / 117 >

この作品をシェア

pagetop