結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 凛音を水無月家の娘だとは誰も認めていなかった。

 父親は結婚のタイミングで養子縁組もしてくれていたので、法的には誰にも凛音を追い出す権利はなかったのだが……彼女にはそんな事情はわからない。大人たちに言われるがままうなずくしかなかった。

 相応の財産分与のみで、まだ十四歳だった凛音は屋敷を追い出され養護施設に預けられることが決まった。

 当時の心境はあまりよく覚えていない。唯一の肉親であった母親の死すら、実感が湧かなかった。

 凛音の心にずっと残っているのは、自分ではなく龍一の姿だ。

 施設に移るための荷物をまとめている彼女のもとにやってきた龍一は、無言のままじっと凛音を見ていた。

 当主の急死により、龍一は若干二十歳にして水無月家の当主となった。決まっていた海外の大学への留学も取り止めて、水無月シップスの社長に就任することになったことは凛音の耳にも入っていた。
< 35 / 117 >

この作品をシェア

pagetop