結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 そう思ったのは、彼の佇まいが龍一の秘書である菅原とどことなく似ていたせいかもしれない。

 彼が名乗らないので、凛音も自己紹介をするタイミングをつかめないでいた。

「新しいクルーズ事業、おもしろそうですね。豪華客船を一泊、二泊で気軽に楽しめるのはありがたいな」

 水無月シップスはもともと海外を巡る高級クルーズ事業を手掛けていた。今回の新事業は若者をターゲットにした〝カジュアルクルーズ〟がコンセプトだ。

 参加者は豪華客船での一流の食事・エンターテイメント・サービスを、比較的お手頃な価格で楽しむことができる。

 会社としてはこの事業単体での収益はあまり求めておらず、若年層への広告宣伝のつもりでいる。

「スタートは八月だそうで。クルーズには最高の季節ですね」
「ですね。海を楽しむには夏が一番ですから」

 凛音もにこやかに返した。

「海は不思議だ。夏はあんなに明るく陽気なのに、冬になると別人のように表情を変える」

 たしかにそのとおりだ。冬の海には物悲しいイメージがつきまとう。

 凛音は冬の海も嫌いではないが、クルーズを楽しむのには不向きだろう。
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