結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 龍一は観察するように彼の一挙手一投足を見守っている。

 粗を見つけてやりたい、そんな気持ちが心のどこかにあるのだろう。

 彼と凛音を結婚させない理由を、無意識のうちに探している。だが、龍一の女々しさを笑うように、目の前の男は魅力に満ちあふれていた。

 物腰は柔らかいが、龍一を相手にしても一歩を引かず堂々と自分の意見を主張する。家柄、能力、資質、どこを見ても文句をつけようがない。

 認めざるを得なかった。

(このタイミングでこの男が現れたことも運命だったのかもな)

 義理とはいえ、兄である龍一とどうこうなれば世間は凛音を好奇の目で見るだろう。そんな人生より、輝かしい未来が待つこの男の妻となるほうがどれだけ幸せか……。

 龍一は静かな、だが、かすかに震える声で言った。

「ありがたい。では、早急に見合いをセッティングしよう」

 譲から候補日をもらって、こちらから連絡を返すと約束した。

(凛音の予定は今夜にでも確認しよう)
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