結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「重大な病気ではなさそうなのですが……念のため、産婦人科に行くようにと」
「え……」

 一瞬、龍一の頭も真っ白になった。その言葉の意味するところがすぐにはのみ込めなかったのだ。

 だが、あらためて見ると、凛音は少し痩せた。もとから華奢なのに、このままでは消えてなくなってしまいそうだ。

(つわり? それで痩せたのか?)

 龍一はともかく凛音を安心させようと、ゆっくりと語りかける。

「なら、すぐに診てもらおう。俺もついているから」

 水無月病院には産婦人科も入っている。今診察してくれた内科のドクターがすぐにそちらに連絡を入れてくれたようだ。

 産婦人科医の診察を受けている彼女を待つ間、龍一は組んだ腕に顎をのせて、じっと考えていた。

(もしそうなら、タイミング的にもどう考えても、俺との子だ)

 凛音に男の影がないことなんて龍一が誰よりも知っている。

 どのくらいの時間が経ったのだろう。ふと気がつくと、目の前に凛音が立っていた。
 彼女の顔を見ただけで、結果がどうだったのかわかる。

 驚愕と困惑、だがその奥に彼女は静かな決意を秘めていた。
< 73 / 117 >

この作品をシェア

pagetop