結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 凛音はしんどそうな声でそう説明した。

 広報部はいろいろな場所に出向くので車を使うことも多い。どうやら、今日は凛音ひとりだったようだ。

「熱中症か? ともかく病院へ」

 今日は記録的な猛暑日になると朝のニュースでも声高に言われていたし、長くは外にいなかった龍一でも身体にかなりの負荷がかかったのを感じている。立ち合いで長く外にいた凛音が熱中症になってもおかしくはない。

 龍一は彼女の身体を抱きあげ、車に乗せた。

 病院の一般診療時間は終わっているだろうが、水無月はグループに病院も持っている。あまりやってはいけないことだが、龍一が行けば融通をきかせてくれるだろう。

 龍一は秘書の菅原に電話で病院に連絡を入れておくよう頼んでから、車を走らせた。

「ごめんなさい。迷惑ばかりかけて」

 後部座席にぐったりと横たわった凛音がささやくような声で言う。

「気にするな」

 凛音の身になにかあったら、そう思うと気が急いてならない。龍一は強くアクセルを踏み、病院へと急いだ。
 
 診察室から出てきた凛音は、ものすごく言いづらそうに小さく告げた。
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