結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 かけられた声に弱々しく振り返ると、そこにいたのは菅原だった。

 唖然とした顔で彼は凛音を見つめている。

 渋谷駅からほど近い神泉の駅近くに、菅原の暮らすマンションがあった。

 センスのいい洒落た建物だ。2LDKの部屋は清潔に整えられていた。彼は独身主義だと龍一から聞いたことがあった。

 いつもは神泉の駅を使うのだが、今日は山手線上にある外出先から直帰だったため珍しく渋谷駅でおりたのだと教えてくれた。

「気まぐれを起こしてよかったです」
「本当に申し訳ありません」

 菅原の差し出す温かいお茶に口をつけて、凛音は恥じ入るように頭をさげた。

 遠くに逃げるどころか電車に乗ることもできずに、こうして菅原の世話になってしまった。

 彼はくすりと困ったような顔で笑う。

「どこか遠くにとのことですが……社長が本気を出せば、日本中、いや世界のどこにいても簡単に見つかってしまうと思いますよ」
「うっ、たしかに」

 龍一の財力なら調査会社をいくらでも雇えるし、世界に根を張る水無月のネットワークも侮れない。

 大人な菅原に冷静に意見されると、自分がいかに考えなしだったかを思い知る。
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